球速歴をスラスラと読み上げた。「中学生が98キロ、高校生が128キロ、大学1年の春に143キロが出て、2年でスリークオーターにして145キロ…」。西武高橋朋己投手(26)はスピードガンとにらめっこしながら、快速左腕と呼ばれるまでに上りつめた。

 高橋朋は漫画を愛してやまないが、まさに劇画のような野球人生だと思う。中学卒業時は「もうダメだ」と一時、投手を辞めようと決意していたという。だが人気漫画タッチを読んで「上杉達也、格好良いな。投手っていいな」と心変わりしたのも、高橋朋らしいエピソードだ。

 私は今回の記事にあたり、技術論で「技」をひもとくことは大前提だったが、彼の球速歴を紹介したかった。中学時代98キロ、高校時代128キロは球児としては極めて平均的だと言える。平凡な球速に夢をあきらめていたら、今の姿はない。「野球教室でよく『どうやったら速い球を投げられるようになりますか?』と質問されるけど1番、困るんですよ。『コツコツ練習すること』と言うしかないですもんね」。もちろん、一握りの存在だ。だが誰もが快速球投手になれる可能性を秘めている。【広重竜太郎】