戦力外から大出世だ! 中日新加入の八木智哉投手(31)が開幕ローテーション入りに大きく前進した。オープン戦2度目の先発で昨年戦力外を告げられたオリックス相手に4回無失点。左腕から妙味のある投球に、首脳陣も先発3~4番手という評価を明かした。ベテラン山本昌の開幕が絶望視されるなど混沌(こんとん)とする先発争いを1歩抜け出した。

 1度、どん底を見た男にとっては、オープン戦でも何でもなかった。プロ10年目の中堅選手とは思えない言葉が八木の口をついた。

 「今日がターニングポイントだと思っていた。この試合で打たれるか、抑えるかで今後の流れが変わる正念場。しっかりゼロでと思っていた」

 自分の持ち味を詰め込んだ。速い球は投げられない。それでも攻めた。ヘルマン、安達、中島、ブランコ、小谷野と5番まで並ぶ右打者に130キロ台の速球を大胆に投げ込んだ。

 初回は厳しいジャッジで不利な状況が続いたが「ストライク、ボールは関係ない。内角をどれだけ攻められるかが重要」と生命線のスタイルを貫いた。

 押すだけでない。1回2死一塁でブランコを外へのシンカーで空振り三振。3回2死二、三塁では中島を外のスライダーで一ゴロに切った。06年に日本ハムで12勝を挙げ新人王に輝いた左腕の本領発揮だ。

 「オリックスには少しやりづらさもあったけど、これで打たれたらそこまでの選手。2年間お世話になったオリックスに恩返しするつもりだった」。4回を0点で投げきった。これでオープン戦2試合で7回2失点となり、視界が明るく開けてきた。

 谷繁兼任監督は「先発という場所に自分で何とかたどり着こうというものを見せてくれた。打者との駆け引きを上手にやっていた。(ローテに)前進しましたね」と上機嫌で話した。森ヘッドコーチも「先発の3~4番手にきている。十分ですよ」と現状の高い評価を明かした。

 大野、バルデスに続く3枚目の左。この状態を維持できれば、この日投げた京セラドーム大阪で行われる開幕カードの阪神戦投入もあり得る。ベテラン山本昌が故障で開幕ローテ入りが難しくなったばかり。約20人いた先発候補の「大穴」が、先頭集団にまで駆け上がってきた。【柏原誠】

 ◆八木智哉(やぎ・ともや)1983年(昭58)11月7日、神奈川県生まれ。日本航空(山梨)で3年夏に甲子園出場。創価大から05年ドラフト希望枠で日本ハム入り。1年目に新人王。13年1月のキャンプ直前に木佐貫、大引らとの大型トレードでオリックスへ。2年間で6試合登板に終わり、昨オフに戦力外。合同トライアウトでの熱投が評価され中日と契約した。戦力外通告から契約までの経緯はテレビ番組で紹介され、5人の子どもたちに再起を誓う姿が話題に。プロ9年通算34勝28敗。181センチ、78キロ。左投げ左打ち。