タイガースドリームや! 昨年11月に支配下登録された阪神島本浩也投手(22)が、初の開幕1軍を確実にした。14日、ロッテとのオープン戦(QVCマリン)で9回に登板し3者凡退。これで対外試合9戦連続で無失点と、結果を出し続けた5年目左腕。「育成出身者」として、球団史上初めて開幕1軍切符をつかんだ。

 島本が新たな球団史を切り開いた。9回、先頭の左打者根元を難なく二ゴロに抑えた後も、マウンドに残った。これまでは左打者へのワンポイント起用が多かった左腕だが、この日は違った。続く右打者2人とも相対した。

 島本 低めに集めることができた。(大嶺翔の右飛は)甘くなってしまった。1発があったら試合が終わるところだったので、気を付けないといけない。

 1死から大嶺翔を右飛、吉田を左飛に封じ、試合を4-4の同点のまま終わらせた。本人は「聞いていなかった」という右打者との対戦。成長を続ける男は、左キラーとしてだけでなく、右打者も苦にしないセットアッパーとしての資質があることを証明してみせた。

 中西投手コーチ 右にも使えるし、2イニングもいけるな。(左腕中継ぎ2枠は)絞りました。

 中西コーチはそう言い残し、バスに乗り込んだ。高宮、榎田、筒井らと争っていた「中継ぎ左枠」は2枠。ロングリリーフ要員と左キラーの2人を用意すると予定されていたが、両方に対応できる島本がその1枠を射止めたと言ってもいいだろう。虎で育成契約を結んだ選手が開幕1軍メンバーに名を連ねた過去はない。球団創設80周年のメモリアルイヤーに、新たな歴史が生まれることになった。

 夢を自らの手でつかんだ。昨年の正月、家族とともに初めて伊勢神宮へ初詣に出かけた。育成4年目。「今年こそは…」と願った。そして昨年11月に念願の支配下登録。背番号は2桁になった島本は、今年1月2日、再び伊勢神宮を訪れた。「毎年毎年が勝負だった。でも今年も僕にとっては変わらず勝負なので。ファームにいてはいけないと思って」。1年間、戦力として戦えますように-。願う夢は、支配下にはい上がることからステージアップし、虎戦士として戦うものになった。真っ赤なお守りに思いを込め、肌身離さぬようカバンにつけた。

 今の願いは1つだけ。チームの力となること。176センチ、67キロと小柄な体に、強靱(きょうじん)な精神が宿る。前日13日には練習中にフリー打撃の打球が頭部に当たるアクシデントも何のその。無失点投球を続けるミスターゼロは相変わらずだ。伸びのある直球、チェンジアップ、フォーク、そして新たに覚えたシュートを武器に、自分よりも大きい打者をバッサリと斬っていく。はい上がってきた5年目左腕が、サクセスロードを突き進む。【宮崎えり子】

 ◆島本浩也(しまもと・ひろや)1993年(平5)2月14日、奈良・大和高田市生まれ。福知山成美時代には甲子園出場なし。10年育成ドラフト2位で阪神入団。昨季は2軍で17試合に登板し1勝3敗、防御率3.40。昨年11月に支配下登録された。今季年俸420万円(推定)。176センチ、67キロ。左投げ左打ち。

 ◆島本の昨オフからの歩み 14年11月支配下登録に昇格。秋季キャンプでは大野豊臨時コーチの指導によってシュートを会得するなど、成長が評価された。今年2月、プロ5年目にして初のキャンプ1軍メンバー入り。江夏豊臨時コーチの指導を受け「決して恵まれた体じゃないのに、いいボールを投げている」と高評価され、最後は同氏からグラブもプレゼントされた。今季初実戦となった2月11日の練習試合日本ハム戦で、3人凡退に仕留め、巨人、中日スコアラーから「1軍でやれる」と警戒された。その後も安定した投球を続け、首脳陣の信頼を勝ち取った。