棚ぼたならぬ、夜空から白星が降ってきた。最下位広島が珍プレーで首位巨人との接戦にケリをつけ、連敗を免れた。同点の9回1死満塁から代打小窪哲也(30)の捕手前へのインフィールドフライを巨人守備陣が捕球ミスする間に、三塁走者が生還した。幸運な形で今季初のサヨナラ勝利。3カードぶりにカード初戦を取った。

 三塁コーチスボックスの石井コーチが球審に詰め寄った。一塁側ベンチからは緒方孝市監督(46)が血相を変えて飛び出す。「自分も経験がある。あそこはタッチプレー」。球場が騒然とする中、アピールを受けた福家球審は広島のサヨナラ勝利を宣告。低迷するチームを勢いづける白星が転がり込んだ。

 同点の9回、1死満塁と攻めた。代打小窪の打球は、捕手前に高々と舞い上がった。丹波三塁塁審がインフィールドフライを宣告。三飛が記録された打球は三塁手村田と一塁手フランシスコがお見合いし、グラウンドに転がった。ハーフウエーの三塁走者野間は、捕球ミスと同時に本塁にスタート。白球を拾ったフランシスコが本塁を踏み、一塁転送の構えを見せる間に、野間は本塁を踏んだ。責任審判の丹波塁審は「ホームはタッグ(タッチ)プレーが必要でした。(走者が)先にホームを踏んだ」と説明。巨人原監督が抗議に出るなど、しばらく球場は騒然とするも、記録は三塁失策。広島の今季初のサヨナラ勝利で幕は下りた。

 珍しい幕切れの立役者となった野間は、三塁塁審の宣告が耳に入っていなかった。「行っちゃえと思った。(三塁塁審の宣告は)聞こえていない。球審を見ていたので。落ちたから走った」。本塁を踏んでも「何が起こったの? と思った」と笑った。フランシスコからタッチされていれば併殺で延長戦突入。暴走にもなり得たプレーが勝利につながり、喜びを爆発させた。

 緒方監督は「こちらも勉強になる試合だった。選手にもしっかり理解させていかないといけない。これが守備側だったらゾッとする」と振り返った。現役時代の91年6月5日大洋戦(横浜)で中堅から同様のプレーを目の当たりにしていた。この日も先発大瀬良を援護できず、1回には拙守で足を引っ張った。苦しみながらも、幸運な形で接戦を制した。広島には、まだツキはある。【前原淳】

 ◆インフィールドフライ 野球規則2・40に明記され、安易な併殺を防ぐ目的がある。無死または1死で、走者が一、二塁、もしくは満塁での打者のフェアの飛球(ライナーとバント飛球除く)で、内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるものをいう。審判がこれを判断し宣告。打球がファウルになった場合を除き打者はアウトとなるが、インプレーのため走者は離塁しても進塁しても良い。飛球が捕球された場合は通常の飛球同様リタッチが必要。捕球されなかった場合は、走者にリタッチの必要はない。また進塁義務も生じないため、この走者をアウトにするにはタッチプレーが必要となる。