米大リーグのレンジャーズを自由契約になっていた藤川球児投手(34)が1日、四国アイランドリーグ(IL)plusの高知に移籍することを電撃発表した。当初は日本球界復帰なら古巣阪神でのプレーが有力視されていたが、この日午前に断りの連絡を入れた。その後、自身の公式ブログを更新し「育ててくれた高知から野球人生を再スタートすることに決めました」と明かした。夢を追う子どものため、そして家族とともに故郷で白球を追う。

 藤川の決断は仰天の独立リーグだった。17日にレンジャーズを戦力外になり、野球人生の岐路に立った。身の振り方を熟慮する日々を過ごしながら、ただ米国でプレーするのは最後だと腹をくくっていたという。日本球界復帰か、それとも現役引退か…。古巣阪神からオファーを受け、公式ブログでは大リーグ他球団からメジャー契約の打診があったことも示唆。プロ入り前の恩師や阪神時代のチームメートらに相談せずに悩み抜き、違う道に進む結論を出した。

 同ブログでこの日、「僕と妻の生まれ故郷の高知で、未来のスーパースターになるチャンスを持った子供たちに僕が投げる姿を見てもらって今後の夢につなげてもらいたい! 僕が投げることで喜んでくれる人達の顔が見たい」と胸中を吐露した。

 近い関係者には「アメリカでやった後は、また、阪神でやりたい」と思いを明かしていたが、米国で生活していくなかで心境に変化が芽生えたようだ。13年6月に右肘靱帯(じんたい)を移植するトミー・ジョン手術を受けて野球観が変わったのも転機だった。「たった5メートル投げられる様になって喜んでました。元気になったらとにかく投げる喜びを一番に感じられる場所で腕を振りたい。必要とされる場所で投げたい。そして家族と一緒に居たい」とつづった。

 高知はかけがえのない故郷だ。高知商で甲子園に出場し、プロ入りへの道を開いた。移籍する高知は、かつて実兄順一氏がGMを務めていた縁もある。心を通わせる人たちがふるさとにいるのも大きな判断材料になった。阪神などオファーを出した球団に対し「本当に感謝しております」と律義だった。独立リーグで骨をうずめるか、それともNPBに復帰するのか…。8日、高知市内で臨む入団会見が注目される。

 阪神での絶頂期に夢を問うと「家族を一生、大きな意味で幸せにしたい。死ぬ間際に幸せだったと、心の底から言ってもらえるような生活を送りたいという大きな夢を持っています」と返ってきた。昨年オフ、1度は引退を決意し、家族に伝えた経緯もある。一本気な男らしい覚悟がある。野球選手として上り詰め、人間藤川球児として夢をかなえる時がやって来た。【酒井俊作】

 ◆高知ファイティングドッグス 四国IL創設の05年に初代王者。06年に角中勝也外野手がロッテにドラフト指名され、初のNPB選手となった。07年秋には経営者を募集し、藤川の実兄順一氏が球団代表兼GMに就任した。09年にはカラバイヨ(現オリックス)が在籍。監督は元阪神の弘田澄男氏、コーチに元オリックスの萩原淳氏、元楽天の吉田豊彦氏。

 ◆独立リーグ入りした元大リーガー 四国アイランドリーグplusでは、阪神を04年に退団し、09年4月に米独立リーグで現役復帰した伊良部が、同年9月に高知入りした。元阪神の小林宏は大リーグ経験はないが、13年にエンゼルス傘下マイナーを春季キャンプで解雇され、8月にBCリーグの群馬入団。14年信濃に移籍したが、同年7月に西武でNPB復帰した。高津、森、木田、大塚はBCリーグの球団に在籍。大家、岩村は現役続行中。