“役者”がそろった城西国際大(千葉県)が、9回サヨナラで初出場初勝利を飾った。元子役の米谷(よねや)真一投手(4年=駿台学園)が、9回2失点で完投。左目眼底骨折でリーグ戦未出場だったドラフト候補の宇佐見真吾捕手(4年=市柏)が復帰し、西南学院大(九州6大学)を破った。

 エース米谷が、子役時代の苦い経験を力に変えて、集中力を高めた。小学校低学年時、丸刈り姿で納豆「金のつぶ」のCMに出演した際、しゃもじでご飯をすくうシーンでNG連発。テーク64までかかった。「野球は撮り直しがきかない。こっちの方が緊張します」と笑った。右横手から最速141キロの直球に、カーブ、シンカー、フォークを織り交ぜ9回2失点。“NGなし”で120球を投げ、歴史的勝利をつかんだ。

 物心ついた時から役者の道を歩み「東京児童劇団」に所属。映画「座頭市」では冒頭のシーンで、悪者に絡まれたところを、監督兼主演の北野武に救われた。代表作は06年の映画「バッテリー」で、主人公の友人役として、菅原文太や天海祐希、岸谷五朗らと共演。アマチュア球界屈指の実績を積んできた。

 「野球がやりたくて、中学入学と同時にやめました」と、スターへの道は断念。今春のリーグ戦で6勝を挙げると、この日は2点を先取されたが、5回以降は無失点で粘り、9回裏2死満塁から、死球によるサヨナラ勝利を呼び込んだ。女房役の宇佐見がケガから復帰し、「マックス」の愛称を持つ193センチの元早大監督、佐藤清監督(59)は初勝利を飾った。佐藤監督は「2点に抑えたのは米谷のペース。1つ1つ歴史をつくっていく。前進あるのみ」とかみしめた。

 92年に開学した大学にとって、大きな意味を持つ1勝。役者を断念してから10年目の米谷は「やっと野球の年数が上回りました」と笑った。身長140センチ台と小柄だった小学校時代、わざと大きい上履きを履いて、足の成長をうながした。狙い通り足は29センチ、身長180センチにアップ。こんな役者魂も、大舞台で野球の力になった。【前田祐輔】

 ◆米谷真一(よねや・しんいち)1993年(平5)8月5日生まれ。小学3年時から投手として野球を始める。駿台学園では3年夏に東東京大会32強。城西国際大では1年秋からベンチ入りし、通算14勝2敗。今春は6勝1敗、防御率1・77。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。