チームの大黒柱が初の完投勝利で全国1勝を飾った。昨秋の明治神宮大会4強の東農大北海道(北海道学生)が富士大(北東北)を下し、前回出場の13年以来2年ぶりの初戦突破を果たした。大学日本代表のエース井口和朋(4年=武相)が9回7安打3失点。自身の全国大会での通算無失点記録は26回1/3で途切れたが、今季公式戦初先発でだれにもマウンドを譲らず、14三振を奪う力投を見せた。

 井口が東京ドームのマウンドで踏ん張った。2点差に迫られた9回2死二塁で投じた144球目。打者のバットが空を切り、この日14個目の三振で試合を締めた。「人生で初めて」という完投勝利に「最後は疲れてしまった」と苦笑い。全日本大学選手権で初白星を挙げ「勝つことだけを考えて投げた」と汗を拭って勝利の余韻に浸った。

 7回までスコアボードにゼロを並べた。この日最速は146キロ。相手打線が直球に強いという情報から、スライダーを有効に使い、2回2死から5連続三振を奪うなど、翻弄(ほんろう)した。

 前回出場の2年時と昨秋の明治神宮大会合わせて5試合計18回2/3を無失点。疲れの出た8回、内野安打などで得点を許し、無失点記録は26回1/3で止まった。「点を取られても投げさせてもらったことが収穫」。ピンチの場面で降板していた、かつての姿はない。エースとして信頼され、最後までマウンドを任された。

 大舞台での準備は整えていた。今春はリーグ戦7試合に救援投手として登板。樋越勉監督(58)は「タフさをつけるため」と、抑え役に必要な精神力と連投に耐えるスタミナを求め、リリーフに据えた。変化球の質向上に努め、リーグ戦の防御率は0・49。自信をつけた。全国が決まり先発への配置転換を言い渡され、2日に1度、1日300球の投げ込みで備えた。昨秋以来の先発で結果を出し「期待通りの投球だった」。指揮官は成長した愛弟子をたたえた。

 プロの評価もぐっと上げた。相手エースで右肩の違和感のため登板を回避した今秋のドラフト上位候補、富士大の多和田真三郎(4年=中部商)を目当てに集まったスカウトたちも、井口の投球に熱視線だ。楽天早川チーム統括本部アドバイザーは「バランスがよく、まとまっている。スピードが上がればもっとよくなる」と評した。2回戦の相手は13年覇者の上武大(関甲新学生)。勝利した昨秋神宮大会準々決勝の再戦に「挑戦者の気持ちで飛ばしていきたい」。97年以来の2勝を目指す。【保坂果那】