最速155キロ右腕は、公務員志望だった…。来秋ドラフト候補の流通経大(東京新大学)生田目(なばため)翼投手(3年=水戸工)が、全国デビュー戦で最速151キロをマークし、9回途中4安打10奪三振4失点に抑えた。城西国際大(千葉県)を破り、22年ぶりの8強進出。早大(東京6大学)専大(東都)神奈川大(神奈川)大商大(関西6大学)が8強に進出した。

 地元の茨城・常陸大宮市には、「親戚じゃなくても、何人かいます」という珍名、生田目と書いて「なばため」と読む。

 そんな来年ドラフト候補が、スカウト陣が大集結した全国デビュー戦で最速151キロをマークした。8回無死満塁のピンチ。併殺打で2死とすると、最後はスライダーで10個目の三振を奪い、気合の雄たけびを上げた。胸を張り、がに股で、肩で風を切るように、ベンチに引き揚げる。今春6勝を挙げ、来年の注目株になる可能性を持つ「ちょい悪ドラフト候補」だ。

 昨秋までは最速149キロだったが、「走るのは嫌いですが、走らされました」と、下半身を強化。ウエートトレーニングにも取り組み、今春のリーグ戦で155キロをマークした。一躍注目を浴びる存在になったが、卒業後は「野球はやりたくない」と真顔で言った。

 「地元に帰って、のほほんと暮らしたいです」。社会人チームで、野球を続けるつもりもない。「地元で公務員やりたいです。地元の市役所で。野球は結構やったので、いいです」と笑った。

 もともとは友人に誘われて始めた野球。まさか公務員志望とは知らないヤクルト松井編成部長は「3年生だし、来年注目される選手になるでしょう。ボールの速さは魅力」。ロッテ永野チーフスカウトは「ボールが強い」と好印象を抱いた。

 ただ、本人の決意は固いのか。「草野球ならいいですね」と、あくまで趣味で野球を続けるつもり。この日は、計8四死球。走り込みが苦手で、厳しい練習をこれ以上積みたくないようだ。ただ、草野球で155キロを投げられたら相手もたまらない。運命のドラフトまで1年4カ月あまり。プロか公務員か、世にも珍しい選択を迫られることになる。【前田祐輔】

 ◆生田目翼(なばため・つばさ)1995年(平7)2月19日、茨城・常陸大宮市生まれ。水戸工では3年夏に県大会8強入りし、流通経大に進学。今春は6勝0敗、防御率2・65。変化球はカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォーク。174センチ、76キロ。右投げ右打ち。