早大(東京6大学)が、打って勝って、3年ぶり5度目の大学日本一に輝いた。2点を追う7回に茂木栄五郎内野手(4年=桐蔭学園)、石井一成内野手(3年=作新学院)の適時打など、5安打で5点を奪って逆転。石井は9回にも2ランを放ち、流通経大(東京新大学)を破った。就任1年目の高橋広監督(60)は男泣き。茂木は最高殊勲選手賞と首位打者賞の2冠に輝いた。

 何でもない一塁ゴロが、突如高く跳ね上がった。2点を追う7回に1点を返した直後。2死満塁から、5番石井が初球のフォークを振り抜く。一塁前へのゴロは、捕球体勢に入った直後にイレギュラーして、右前に抜けた。2人がかえって、逆転。「力が入って打ち損じました。みんなの気持ちが、ボールに乗ってくれたと思います」と喜んだ。

 野球の神様を味方にしたとしか思えない逆転劇。9回には再び石井が、右翼席に2ランを放ち、突き放した。右手を早大カラーのエンジに染まった三塁側スタンドに掲げ、ベースを回る。3月の沖縄キャンプでは全体練習後に3時間半以上バットを振った。今度は培った力で、試合を決めた。

 宝くじや懸賞に当たるなど、普段からの幸運は「何もないです」と笑う石井。高橋監督が就任した今季から「時を守り 場を清め 礼を尽くす」がチームの指針になった。ベンチ入りメンバーが暮らす寮では毎朝午前6時半から清掃を開始。トイレ、玄関、食堂などを毎週くじ引きで決める。主力も、4年生も運次第でトイレを磨き、ひと昔前にはやった「トイレの神様」が宿ったのか。運+実力で、大一番に勝利した。

 ドラフト上位候補の茂木は、7回に反撃の適時打を放つなど、驚異の打率6割1分5厘で首位打者賞を獲得した。準決勝は大会タイの20安打を放つなど、チーム打率3割6分7厘。通常の練習から逆方向への打撃を徹底し、今大会の47安打中約6割は、反対方向への安打だった。茂木は「存在感を示せたかなと思う」と、今大会2本塁打で、飛距離も格段伸びた。

 毎週金曜日は、茂木と石井で寮から自転車で5分の中華料理屋に行き、レバニラ定食を食べるのがルーティン。3年ぶりの優勝で、4年生は、早大史上初めて4年間で2度日本一に輝いた最強世代になった。下馬評では6大学リーグ4位と評された中、打って、打って、打ち勝って、春の日本一に立った。【前田祐輔】