お祝いムードが台無し~。プロ野球史上初めての1万試合に到達した阪神が、まさかの9回逆転サヨナラ負けだ。DeNAに2点リードの9回、呉昇桓投手(32)が代打後藤に同点2ランを浴び、さらに石川の適時打に屈した。大暗転の4連敗で首位奪回に失敗。これで史上初めてセ・リーグ全球団が借金となり、5位広島から首位ヤクルトまで0・5ゲーム差にひしめく大混戦だ。

 まさかの結末が待っていた。2点リードの9回、マウンドに守護神呉昇桓が上がった。だが、石直球にいつもの威力がない。先頭バルディリスにヒットを許すと、次打者の代打後藤にはカウント不利からカットボールを打たれた。打球は右中間スタンドへ。まさかの同点2ラン。確信していた白星がスルリと逃げた。

 守護神は気を取り直して次打者に向かったが、状態が悪いのは明らか。高めの直球で空振りどころか、ファウルも奪えない。高城にも中前打を許すと1死二塁となって、最後は石川に真ん中付近の速球を打たれた。サヨナラ負けの打球が右中間を真っ二つに割るのを見届けると守護神はしばし、動けなかった。

 強くなった雨でマウンドがぬかるんでいたのか?

 「そういうのはない」

 打たれた球は?

 「ほぼ、真ん中だと思う」

 いつもと違う状態だったのか?

 「それはない」

 試合後、呉昇桓は顔を紅潮させて帰りのバスへと歩いた。何を聞かれても、厳しい表情を変えずにこう答えた。大黒柱メッセンジャーが8回1失点の熱投。これしかないという必勝リレーを実現させたが、9回にまさかの大暗転…。野球の怖さを思い知らされた。

 和田監督 そういうことだな…。きょう(の呉昇桓)はカウント負けというか、ボール先行して(ストライクを)取りにいったところを打たれていた。

 指揮官もさすがに落胆の色が濃かった。この日はプロ野球史上初の通算1万試合という節目だった。試合前から必勝を期していた。

 和田監督 それぞれにいたわけではないけど、節目の試合に接点があってゲームをする。そういう試合をとりたいし、いいゲームができるようにしたい。

 先人たちが築いてきた伝統球団の歩みを勝利で祝いたい。そんな意気込みが打ち砕かれての4連敗。追加点を奪えるところで奪えない詰めの甘さも露呈し、ついに借金生活に逆戻り。虎の急失速が0・5差に5チームがひしめく究極の大混戦を生んでしまった。

 和田監督 とにかく、こういう試合を乗り越えていかないといけない。

 呉昇桓 切り替えるしかない。明日、また、試合があるので。

 1試合、1試合が球団の歴史になる。指揮官も、守護神も、重い敗戦から必死で前を向いた。【鈴木忠平】

 ▼チーム通算1万試合=阪神 3日のDeNA11回戦(横浜)で達成。初試合は36年4月29日金鯱戦(甲子園)で、1万試合到達は初めて。阪神に続き、リーグ戦が始まった36年から参加したオリックス、中日、巨人が今季中に1万試合を迎える。阪神、中日、巨人は50年から同じセ・リーグに参加したが、36年の試合数(神46、中42、巨34)や引き分け再試合、打ち切り試合の関係で阪神の試合数が最も多く、最初に1万試合へ到達した。

 ▼阪神呉昇桓が2点リードを守りきれず、サヨナラ黒星を喫した。今季の救援失敗は4度目。4月19日巨人戦で9回に1失点し追いつかれ、6月2日ロッテ戦は3-2リードの9回に角中に満塁弾を浴び(初黒星)、6月23日広島戦は1失点で追いつかれ延長戦へ(引き分け)。この日は4安打で3点を奪われた。14年は救援失敗が7度あり、3度サヨナラ黒星。メッセンジャー先発試合での救援失敗は昨年5度で同投手の白星を消したのは3試合、今季は初めて。