プロ5年目のソフトバンク千賀滉大投手(22)がオリックス打線を7回4安打無失点に抑え、先発初勝利を収めた。3年ぶりの先発で、約1年3カ月ぶりの白星となるプロ3勝目。エース金子との投げ合いを制し、スタンリッジの産休で巡ってきた機会で猛アピールに成功した。チームは今季初の1-0勝ち。優勝マジックは28に減った。

 仲間からウイニングボールを受け取ると、こわばっていた表情が一気に崩れた。3年ぶりの先発を任された千賀が、14年5月23日阪神戦以来、遠ざかっていたプロ3個目の白星を手にした。目標としていた先発初勝利。肩の力を緩め、笑みもこぼれでた。

 「力みすぎて上のフェンスが見えるくらい緊張していたけど、先発で勝ててうれしい。今日の投球を忘れずに、これからもしっかり先発でやりたい」

 制球に苦しんだが、許した安打は4本。中継ぎ時代は直球とフォーク中心の組み立てだったが、スライダーを覚え、投球の幅を広げたことで、安定感が増した。6、7回にはイニングをまたぎ、3者連続の空振り三振。球威も最後まで落ちなかった。

 10年ドラフト育成4位でソフトバンクに入団。12年に支配下登録され、2度の先発チャンスを与えられたが、白星はつかめなかった。13、14年は150キロ超の直球を武器にリリーフに転向。そして今季から先発に再転向し、スタンリッジの「産休」でめぐってきた1度きりのチャンスを逃さなかった。

 愛知の無名公立、蒲郡高出身。地元スポーツ店の店主からスカウトが情報を聞きつけて獲得した隠し玉だ。地元中日のスカウトがプロ入り後、2軍で千賀の投球を見て「愛知にこんな選手がいたなんて…」と悔しがったほど。そんな右腕を将来の先発候補として期待する工藤監督も「点を取られないことが勝ちにつながる。千賀はよく投げた」とたたえた。

 今回は左の中継ぎ嘉弥真に代わり、今日19日に登録を抹消される予定だが、この1勝は大きな自信になった。首位を独走するホークスの先発陣は強固だが、人選でさらに首脳陣を悩ます、見事な好投だった。【福岡吉央】

 ◆千賀滉大(せんが・こうだい)1993年(平5)1月30日、愛知県蒲郡市生まれ。蒲郡高から10年育成ドラフト4位で入団。2年目の12年4月に支配下登録。13年は「お化けフォーク」を武器に中継ぎで51試合に登板。球宴にも出場。名前の「滉」の字は父直伸さんが大好きな俳優岩城滉一から。186センチ、86キロ。右投げ左打ち。