左肩腱板(けんばん)炎症から復帰したドラフト1位候補、駒大・今永昇太投手(4年=北筑)が、昨年11月19日の明治神宮大会決勝以来の神宮マウンドで、1回1安打1奪三振無失点に抑えた。10球団スカウトの前で延長12回から登板し、最速147キロをマーク。296日ぶりの公式戦で、日大を破り、先勝した。

 西日が傾きかけた延長12回、1点勝ち越した直後に今永が小走りでマウンドに向かった。296日ぶりの公式戦。帽子を取って一礼すると、18勝を挙げた慣れ親しんだ場所に立った。中日落合GM、西武渡辺SDらを含む10球団20人以上のスカウトが一斉にスピードガン、ビデオを構えた。

 初球、腕を振って145キロの直球を投げ込んだ。3月下旬に左肩を痛め、今春は登板なしに終わった。「自分の中では軽傷というか、今は何の不安もありません」。1死二塁のピンチを招いたが、さらに腕を振って自己最速に1キロと迫る147キロ。追い込むと、内角に鋭く沈むスライダーで空振り三振に切った。

 2四球を出して制球に苦しむ場面はあったが、何より投げられたことが大きい。復活を懸けた夏。テーマは「ケガする前より進化しないと意味がない。過去の自分は1回捨てる。新しい自分をつくる」ことだった。頭を高校以来という2ミリに刈り込み「泥くさくやるしかない」。週6回ブルペンに入り、ウエートトレーニングにも力を入れた。

 自分に厳しく、試合後は高めに浮いた直球の反省を繰り返した。「ピンチの時に力任せになってしまった。自分の中ではまだ50%もいっていないです」。理想に掲げる、スピード表示以上に切れがある直球を追い求める。【前田祐輔】