戦国東都の「2部の星」が、ドラフト戦線を熱くする。全日本大学野球連盟と日本高野連は8日、22日のドラフト会議でプロ入りを希望する選手に提出を義務付けたプロ野球志望届の提出期間を締め切った。大学80人、高校78人の計158人が提出した。東都大学野球リーグ2部の青学大・吉田正尚外野手(4年=敦賀気比)は大学日本代表の4番を務めたドラフト1位候補で、各球団の評価が急上昇中だ。

 吉田が衝撃の2発を放ったのは、高校野球真っ盛りの真夏の甲子園だ。8月26日の大学日本代表対高校日本代表戦で、2打席連続本塁打をたたき込んだ。

 1発目(中京大中京・上野)は右翼席中段へ、2発目(花巻東・高橋)は低めのスライダーをバックスクリーンに運んだ。打球を追った中堅手の関東第一(東東京)オコエ瑠偉外野手(3年)が、想像以上の伸びに、思わず苦笑いを浮かべて見上げた特大弾。吉田は「2部だとなかなかアピールすることも難しいですから」と、大舞台を発奮材料にした。6月のNPB選抜戦では、西武高橋光の147キロ直球を右中間スタンドに運んだ。注目される試合で実力を発揮する、プロ向きの資質を持つ。

 173センチ、80キロと小柄だが、打撃力は今ドラフトNO・1の呼び声が高い。譲れない身上はフルスイング。小学校卒業時は148センチだったが「遠くに飛ばしたい。純粋な気持ちでした」と、初心を忘れない。広角に強い打球を打ち分け、今秋リーグ戦は3本塁打。9月27日の東洋大戦で、1部、2部合計で通算100安打の大台に到達した。

 すでにプロ12球団から調査書が届く。6大学リーグの安打記録に48年ぶりに並んだ明大・高山俊外野手(4年=日大三)らとは大学日本代表でともに戦った。巨人山下スカウト部長は「飛ばす力は一番ある。プロで打率を残すのは高山かもしれないが、ホームランは吉田」と高評価。さらに「外れ(1位)に残っていたら、また重複して抽選になるのでは」と言った。

 各球団、ドラフトの補強ポイントは投手重視の傾向が強い。吉田は「外れ1位」の目玉か、抽選を嫌い、単独指名に踏み切る球団が現れるか。「3割20本を積み重ねるような選手になりたい」と、その時を待っている。【前田祐輔】

 ◆吉田正尚(よしだ・まさたか)1993年(平5)7月15日、福井県生まれ。6歳から野球を始め、足羽中では鯖江ボーイズに所属。敦賀気比では2度甲子園に出場。高校通算52本塁打。青学大では1年春から出場し、1部、2部通算108安打。好きな選手はナショナルズのブライス・ハーパー。50メートルは6秒2、遠投100メートル。家族は両親と兄。173センチ、80キロ。右投げ左打ち。