敗者には異例の光景だった。試合終了の瞬間、阪神和田豊監督(53)は、ナインに大きな拍手を送った。そして「ようやった!」と大声が響いた。2点を追う9回。鳥谷と代打西岡の連打などで1死二、三塁と攻めた。最後はゴメスとマートンが凡退して、無念の終戦。だが、誰もが勝利を信じ、死力を尽くした。拍手は感謝の印だった。

 和田監督 選手は最後まで諦めず何とかしようと戦ってくれたんでね。何とか勝たせてやりたかった…。

 采配も全力だった。2勝5敗の苦手の左腕ポレダ対策で、引退する関本を6番でスタメン起用。1失点好投の能見を5回で諦め、2番手に先発要員の岩田を送り、次々と代打攻勢も仕掛けた。だが勝負手はあと1歩及ばず、和田阪神の4年間が幕を閉じた。三塁側ベンチを訪れた巨人原監督からねぎらわれると、こみ上げてくるものも光った。

 和田監督 全国のタイガースファンにご応援をいただいたのに、その期待に応えられずに申し訳ない。結果の世界だから、悔しい思いしかない。(阪神で)選手、コーチ、監督と立場は違うけど、優勝しようとやってきたのは同じだった。

 85年のプロ入りから1度もユニホームを脱がず、縦ジマに人生をささげてきた。ファンの熱さを知り尽くし、どんな時も目標は、現役1年目に輝いた日本一の再現だった。だが、監督成績は5位、2位、2位、3位。あと1歩で頂点を逃し、志半ばで退任する。

 和田監督 選手も悔しいと思う。その悔しさを持って明日から来年に向かって欲しい。ファンの期待に応えられるチームに、生まれ変わってもらえると思う。

 今日13日、坂井オーナーに退任報告を行う和田監督。退団会見では心をこめたラストメッセージを送り、愛するタイガースに別れを告げる。【松井清員】