大谷のワールドクラスの奪三振ショーで、侍ジャパンが白星発進した。初開催の国際大会「プレミア12」が札幌ドームで開幕した。初戦の韓国戦に先発した大谷翔平投手(21)は、最速161キロの直球とキレのいいフォークを武器に、6回2安打10奪三振無失点。強力韓国打線に三塁も踏ませない好投だった。日本は今日9日に台湾へ移動し、あさって11日に第2戦となるメキシコ戦(台湾・天母)に臨む。

 最大のピンチに、大谷は究極のシナリオを描き、実行した。二塁打と四球で無死一、二塁となった5回。「引きずらずに。3人三振取ればいいや、くらいの気持ちだった」。バントの構えをする許敬民(ホ・ギョンミン)の胸元をえぐってファウルで追い込み、フォークで三振を奪うと、続く姜■鎬(カン・ミンホ)、羅成範(ナ・ソンボム)も連続三振。思惑通りに難所を切り抜け、大歓声をバックにガッツポーズでマウンドを降りた。

 速球に強いといわれる韓国打線を相手に、ストレートで真っ向勝負した。1回、3番の金賢洙(キム・ヒョンス)へは、今季の最速と並ぶ161キロをマーク。李大浩、2年連続50発男の朴炳鎬(パク・ビョンホ)にも、速球主体で攻め、フォークを決め球にする、いつものスタイルを貫いた。「真っすぐ1本で振ってきていたけど、空振りを取れて、押し込めたのでよかった」。メジャーのスカウトも大挙駆けつけた国際大会の開幕戦。6回2安打無失点、10奪三振の圧倒的な内容だった。

 前夜、部屋でひとりになると、映像で見た韓国打者が次々に脳裏に浮かんだ。そのたび緊張感は増したが「ああしようこうしようと整理できた。これでもかというくらい準備して入れた」。打ち取るイメージが積み重なっていった。この日、グラウンドに足を踏み入れた頃には、すっかり心に余裕ができていた。「球場に入ってから緊張していた」という3月のシーズン開幕戦のときとは、メンタルの準備が違った。

 福岡の直前合宿では、肉体の準備も怠らなかった。顔合わせを終えた練習初日、外食に出掛ける選手も多い中、大谷はホテル内で食事を済ませた。「ウエートしないと落ち着かないので」。小久保監督から、直接告げられた「開幕投手」。責任と自覚を胸に、日の丸を背負っていた。

 高校時代は甲子園で勝てず、U-18世界選手権では韓国に敗れた。今季は優勝を争うソフトバンク戦で炎上し、CSでも敗戦投手になった。「高校時代は抜きにして、初戦を取れてホッとしています。今まで、あんまりこういう試合で結果を出すことができなかったので」。世界の頂点を目指す侍ジャパンの船出に、強烈な追い風を吹かせた。この日、世界が「大谷翔平」を知った。【本間翼】

※■=王ヘンに民

 ▼大谷が1回、金賢洙の2球目に球速161キロをマークした。五輪、WBC、プレミア12の日本投手では、09年第2回WBC決勝・韓国戦のダルビッシュに並ぶ最速タイ。ダルビッシュはマイル表示(100マイル)だが、相手打者は同じ金賢洙だった。大谷は14年球宴と同年10月5日楽天戦で162キロを出している。

 ▼先発の大谷が10奪三振。プロが参加したシドニー五輪以降、五輪とWBC、プレミア12で2ケタ三振を奪った日本投手は08年北京五輪1次リーグ韓国戦の和田(10)カナダ戦の成瀬(10)以来7年ぶり。WBCは球数制限があり、13年の第3回大会2次ラウンド・オランダ戦前田の9が最多。韓国戦では、00年シドニー五輪の松坂(2度)前記和田に次いで3人目の最多タイ。韓国戦で2ケタ奪三振の勝利投手は初めて。