亜大(東都大学)が延長14回の激闘を制して早大(東京6大学)を破り、2年ぶり5度目の優勝を飾った。1点を追う7回1死二、三塁で重盗し同点に追い付くと、延長14回2死三塁で暴投で勝ち越した。適時打なしで2点をもぎとり、堅実な守りと走塁で日本一に輝いた。投手陣は胴上げ投手となった花城直投手(4年=八重山)を含め4人を送り込み、東京6大学リーグ史上初の「4冠」を狙った早大を退けた。

 瞬きすら許されない接戦を制するまで、あと1人。延長14回2死。難病の黄色靱帯(じんたい)骨化症から復帰した花城が、ラストバッターを空振り三振に仕留めた。「最高です。ここまで投げられるようになったのは周りの方のおかげです」。雨の強くなった灰色の空の下に、亜大ナインの笑顔の花が咲いた。

 耐えて、しのんで、わずかなチャンスをものにした。早大・大竹の前に6回まで3安打。7回1死二、三塁。重盗で同点としたが、8回から延長13回まで無安打。突破口を開けずにいたが、春に最下位争いをしたナインは強くなっていた。

 延長13回裏1死満塁。4番手の花城が、磨きをかけたスプリットで併殺に打ち取った。しのいだ延長14回2死三塁。打席に入った北村祥治主将(4年=星稜)の4球目。暴投で勝ち越した。「この1年を表しているようなゲーム。苦しい中で粘って粘って1点をもぎ取って勝ちきれた」。適時打はない。守って“らしさ”でもぎとった日本一だった。

 「顔晴る(がんばる)」。今年のスローガンは生田勉監督(49)の長女の経験をもとにした。特別支援学校に通った長女は今春社会人になったが、就職活動に苦しんだ。それでも諦めず、希望する会社に出向いた。笑顔であいさつを続けるうち自ら未来を切り開いた。「うちの子どもは笑顔で運が開けました。苦しいこともあるけど笑顔で過ごそう、と。今日、選手と笑いあうことができました」。

 ドラフト会議で指名漏れし、一時はどん底だった北村主将は言った。「8シーズンで優勝6回、日本一が2回。こんな幸せな学年はない。感謝の気持ちでいっぱいです」。全員の顔に、スローガン通りの笑顔があふれた。【和田美保】