昨春のセンバツ優勝右腕、日本ハムのドラフト4位平沼翔太内野手(18=敦賀気比)が、栗山監督から条件付きで「投打二刀流」手形を受け取った。9日、2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で新人合同自主トレがスタート。プロでは遊撃手として船出する平沼は、類いまれな打撃センスを披露。たった1日で栗山監督のハートをわしづかみにした。野手として主力に上り詰めることを条件に、いきなり将来的な二刀流転向プランを勝ち取った。

 熱い視線を受けながら、平沼が魅力いっぱいのスイングを繰り返した。「すぐに動けるようにしてあります。大丈夫です」。年末年始も実家のある福井で自主トレを続け、待ち望んでいた新人合同自主トレ初日。鎌ケ谷の室内練習場でのティー打撃で、抜群のセンスが輝きを放った。一心不乱に白球を打ち返す姿は、栗山監督の心を奪った。「平沼のバット軌道は、やっぱりいいよね」。練習が一段落すると、指揮官が歩み寄ってきた。

 エース兼4番として昨春センバツを制したプライドと秘めた野望をくすぐる、言葉が掛けられた。「ピッチャーの夢を諦めずに持っておけ。早く(1軍に)上がってこい」。真剣な表情で訴えかけられた、将来的な「投打二刀流」挑戦への可能性。「声をかけてもらって、うれしかったです」と、思わず笑みがこぼれた。7日の入寮時に内野用に加えて投手用グラブも持ち込んだ。野手1本でのスタートに納得はしている。一方で、投手を諦めきれない気持ちがあるのも事実。少しだけ、秘めた思いが前進した現実を素直に喜んだ。

 同時に、二刀流実現のためのノルマも課された。栗山監督は数字こそ挙げなかったが、誰からも認められる形を望む。「チームとしては(優勝に)貢献してもらわないと。(1軍で)活躍すれば、そういうこともできる。だから、活躍しろ」。早期に内野手としてチームの主力に成長することを必須条件とした。

 平沼も自覚している。「早く上(1軍)に上がってこいと言われました。まずは野手で1軍に上がらないといけない」。2月1日に始まる春季キャンプは2軍スタートが濃厚だが、何にも替え難い最高の発奮材料を得た。昨春の聖地で投打に才能を爆発させた姿に、栗山監督はほれ込んだ。あれから約10カ月がたったが「(ドラフトで)取ったことは間違いではない」と、確信させた。プロのステージにやってきたセンバツ優勝右腕の真の夢を追いかける日々が、始まった。【木下大輔】

 ◆平沼翔太(ひらぬま・しょうた)1997年(平9)8月16日生まれ、福井県出身。小学6年から中学まで、元阪神の故小林繁さんが総監督を務めたオールスター福井に所属。敦賀気比では春夏3度の甲子園出場で、3年春は優勝投手。15年ドラフト4位で日本ハム入団。今季の推定年俸520万円。50メートル走は5秒9。遠投100メートル。家族は両親と姉、兄。179センチ、78キロ。右投げ左打ち。

<平沼の投打実績>

 ◆野手 15年春甲子園の準々決勝・静岡戦で右翼ポール際に本塁打を放つなど、甲子園3大会で通算40打数15安打、打率3割7分5厘。昨秋の国体では遊撃手をこなしている。

 ◆投手 14年夏、15年春夏の甲子園3大会で12試合に先発し、9完投勝ち。センバツに続く連覇を狙った15年夏は、1回戦で明徳義塾(高知)に勝ち甲子園通算10勝目。2回戦で敗退したが最速144キロをマークした。