広島新人7選手の合同自主トレが10日、広島・廿日市市の大野練習場で始まった。緊張の初日を終えたドラフト7位青木陸(18=山形中央)は練習後、5位の西川龍馬(21=王子)とともに自主的にバットを振った。約1キロの重量バットを左手1本、右手1本でそれぞれ振り回す怪力ぶりを発揮。「赤い弁慶」がドラフト最下位指名から下克上を狙う。

 多くのカメラのレンズを向けられても、青木はルーティンを崩さなかった。静かな大野練習場に2本のバットを手に現れた。重さ1キロの青いマスコットバットを右手1本で握り、トスされた球をたたいた。一定のリズムで打つと、左手1本に持ち替える。両手でも握る。900グラムのバットでも振る。豪快なスイングは、仁王立ちの前に大暴れした弁慶のようだ。

 「打ちたかったので打ちました。久しぶりだったので、ちょっと崩れていましたね。あのバットで練習すると分かるんです」

 中学3年時から続けるルーティンで約200球打ち込み、汗を拭った。初の合同練習には多くの報道陣が詰めかけ、緒方監督が視察。最年少には肉体的な疲労だけでなく、気疲れもあった。それでも自主的にバットを振った。マスコットバットを左手と右手でそれぞれティー打撃を行うルーティンは、広島のレジェンド前田智徳氏と同じ。現在チームで1キロ超のマスコットバットを使用するのは新井ら数える程度。それをすでに4年も続けている。

 「最初は振り切れなかったけど、高校に入ると振れるようになりました」

 力任せに振るだけではない。フォロースイングは肩より上がらない。「試合になればどうしてもバットは上がる。練習から上げていては形が崩れる。いかにインパクトで速く振れるかを意識しています」。緒方監督の前で力んだノックも、練習後に「おかわり」した。豪快さの中に繊細さも併せ持つ。

 「新人の中でも僕が一番下。体づくりからしっかりやっていきたい」

 ドラフト最下位指名も、プロに入れば横一線。東北の怪力がバット1本ではい上がっていく。【前原淳】

<青木陸(あおき・りく)アラカルト>

 ◆生まれ 1997年(平9)11月11日、山形県天童市。

 ◆球歴 小4時に「成生ファイヤードラゴンズ」で野球を始める。山形中央では2年生から4番に座り、2年夏に甲子園出場。高崎健康福祉大高崎戦で右中間スタンドへ本塁打を放った。3年夏は県大会準決勝で敗退も、高校通算46本塁打。公式戦通算打率4割5分5厘を残し、ドラフト7位で広島に入団した。3年生では捕手を務めたが、プロでは内野手登録。

 ◆好きな言葉 「なせば成る」

 ◆憧れの選手 同じ天童市からプロ入りした栗原健太(楽天)。生まれも育ちも東北だが、小さい頃からカープの帽子をかぶっていたカープ男子。楽天が創設されてもカープ一筋を通した。

 ◆サイズ 181センチ、88キロ。右投げ右打ち。足は29センチ。握力は右手64キロ、左手67キロ。50メートル走6秒5。遠投105メートル。

 ◆家族構成 父、母、妹2人、祖母。