野球殿堂入りが18日、東京都内の野球殿堂博物館で発表された。大毎(現ロッテ)などで2314安打の故榎本喜八氏が選ばれた。

 ゲストスピーチに立った首位打者7度の張本勲氏が榎本氏を絶賛した。「昨日(17日)あらためて連続写真をみたが、理想的なフォームです。余計な動きのない、教科書です」。史上3人目となる2000安打を31歳7カ月で達成した。この最年少記録は今も破られていない。

 榎本氏は55年、早実から毎日(現ロッテ)にテスト入団した。それが近鉄との開幕戦でいきなり5番。高卒ルーキーで開幕クリーンアップは世界の王も、張本にもない。2リーグ制後、たった1人の記録だ。打率2割9分8厘、16本塁打で新人王に輝いた。「安打製造機」と呼ばれる打者は数多く出たが、その第1号といわれる。

 172センチの左打者。常にフルスイングのプルヒッターだった。早実、毎日の先輩になる荒川博氏が巨人川上監督から打撃コーチとして勧誘された際、「榎本を育てたように王を育ててくれ」と言われたという。実働18年。西鉄を最後に引退。自宅に打撃練習場をつくり、バット代わりに日本刀振ったこともある。引退後も当時の本拠東京球場まで往復40キロを走った。毎日腕立て伏せ2000回をこなしていたという「伝説」が残る。

 長男喜栄(よしひで)氏(50)は「野球に関わって若い選手にお手本を見せるために、だったと思います。畳でスイングしていた姿が記憶にあります」。野球道を究めようとした「求道者」という評価がある。12年3月に他界。喜栄氏はこう付け加えた。「僕らにはやさしい父親でした。光栄に思いますし、子供たちにも伝えたい」と話し、父をしのんだ。【米谷輝昭】

 ◆榎本喜八(えのもと・きはち)1936年(昭11)12月5日、東京都生まれ。早実で甲子園出場3度。55年、毎日(現ロッテ)にテストで入団し、通算2222試合で2314安打、打率2割9分8厘、246本塁打、979打点。1年目に新人王。首位打者2度、最多安打4度、最高出塁率1度、ベストナインには9度。一塁手の最多連続守備機会無失策はシーズン1128(68年)連続シーズン1516(67、68年)は、ともプロ野球記録。西鉄へ移籍した72年に引退。現役時代は172センチ、71キロ。左投げ左打ち。12年3月14日、大腸がんのため75歳で死去。

 ◆競技者表彰エキスパート部門 現役を引退したプロの監督、コーチで引退後6カ月を経過している者、現役引退後、21年以上経過しているプロ選手も有資格者とする。20人以内の候補者を選び殿堂入りした競技者と競技者表彰の幹事及び野球報道経験30年以上の委員(現在119人)が5人以内の連記で投票。3分の2の有効投票で、75%以上の得票者を殿堂入りとする。