「板グラブ」で鉄壁の外野陣をつくる。西武栗山巧(32)秋山翔吾(27)ら外野手が、宮崎・南郷キャンプで内野手の守備強化に使われる「フェンスグラブ」で捕球と送球を磨いている。今季から就任した佐藤友亮外野守備走塁コーチ(37)の発案で取り入れた、外野手には珍しい練習法で失点とケガを防ぐ。

 矢のような送球だった。17日に行われた実戦形式のノックで、中堅の秋山と右翼の斉藤が好返球で走者を刺した。うちわのような形の平らなグラブをはめ、悪戦苦闘しながらボールに食らいついた成果だった。秋山は「実戦での感覚が違ってきた」とうなずいた。

 新たな練習メニューには、3つの狙いがあった。佐藤コーチは「キャッチボールができていない選手が多い。基本をしっかりさせて、持っている力を生かすために始めた」と導入の経緯を明かした。選手には「体の中に球を合わせて!」「グラブの芯に当てろ!」と指示を飛ばす。正しい捕り方ができなければ、やり直しだ。現役時代に外野や二塁を守った同コーチは「現役の時も使っていたが、外野手がこのグラブで練習することは、ほとんどないと思う」。内野手が素早く正確に球を持ち替えるための道具で、捕球と送球の動作を体に染みこませていた。

 ゴロはグラブを地面と垂直に立てて真正面に転がす。飛球はグラブの芯に「ポン」と音がするように当て、素早く投げる手に持ち替える。栗山は「芯に当てないと、握り替えがしっかりできない。外野手も必要なこと」。秋山も「この時期にしかできない練習。僕の中にはなかった意識だった。引き出しを増やす意味でも大事な練習だと思う」と効果を実感していた。

 正しい捕球と送球を身につけ、ケガ防止にもつなげる。プロの技術があれば、グラブだけでつかみにいっても捕れる場面は多い。同コーチは「それはどこかに無理があるということ。無理はケガにつながる可能性を含む」。無理な体勢からのスローイングで肩や肘を壊しては元も子もない。だから「グラブを球に合わせるのではなく、体の中に球を合わせて捕る」という指導を徹底している。

 今季から「コリジョン(衝突)ルール」の導入もあり、田辺監督は「状況判断も含めて、より大事になってくる」と言った。昨季の失点、補殺数はともにリーグ4位。秘密道具で鍛えられた外野陣が逆襲のキーマンになる。【鹿野雄太】

 ◆フェンスグラブ 内野手(特に二塁手)が、ボールを芯に当てて正確に持ち替える練習をするために使用されるケースが多い。サイズは手のひらとほぼ同じ。中にフェルトが1枚入っているだけで、折り曲げる関節はない。

 ◆西武の外野守備 昨季はリーグ1位の刺殺873、補殺はリーグ4位の15、失策は2番目に少ない7で、守備率9割9分2厘はリーグ2位。特に秋山は刺殺341がリーグ1位、守備率9割9分4厘はリーグ3位でゴールデングラブ賞獲得。栗山は刺殺237がリーグ3位、守備率9割9分6厘がリーグ2位と盤石。向上が求められるのは、守備率9割5分7厘の木村文と、今季は捕手としての出場を狙う森(昨季外野で9割6分8厘)。