コリジョン(衝突)ルール適用1号のプレーが15日、ヤクルト対広島(神宮)で起きた。2回表2死一、二塁から広島会沢が左前打。二塁から松山が本塁を突いたが、左翼山崎の返球でアウトに。このプレーがビデオ判定となり、ヤクルト中村捕手が走路をふさいでいたとしてセーフに覆った。中村には警告が与えられたが、2度受けると退場となるため、真中監督は戸惑いを隠しきれなかった。

 ヤクルトの捕手中村が山崎からの返球をこぼした。拾って松山にタッチしたとき体からぶつかる体勢となってしまった。「ブロックになってしまうなと思った。ボールを落としたのが悪かった。落としていなかったらアウトと言われた。捕球の大切さを確認した」と受け止めた。ただし「点が入りやすい印象。手だけでタッチにいったら肩を持っていかれる可能性もある」と、故障防止の面には首をかしげる。

 責任審判の森二塁塁審が、すぐ試合を止め審判団を集めビデオをチェックした。「まさにコリジョンルールです。落球した後ブロックした。していなければセーフだったという判定です。リプレーを見るのは審判の判断。チームの判断は入っていない」と説明した。映像が見やすく判定はスムーズだったという。今回のように他にも走者がいる場合はボールデッドにできないため、球審はまずアウト、セーフをジャッジ。その後、検証に入る方向性を示した。

 ブロックした中村には警告が与えられた。両リーグのアグリーメントに記されており、NPBの見解では2度目の警告で退場となる。山口球審から説明を受けた真中監督は戸惑ったという。「ブロックでセーフは仕方ない。でも悪質でないものもあるから、いろんなパターンがあっていいんじゃないか」。捕手2人制を予定していたが、場合によっては3人制を敷くことも示唆した。

 得点を認められた攻撃側にも不安はある。広島緒方監督は「逆にうちが守備側だったらと考えるとね。あの場面でヤクルトはベンチに引き揚げてしまっていた。投手の心理状態とか投球の細かい動作にも影響してくる」と指摘した。初のケースで審判団も両チームの首脳陣、選手も混乱した。公式戦で競った場面で起きた場合どうなるのか? 勝敗の行方をも左右する判定となりそうだ。【矢後洋一】

 ◆コリジョンルール 本塁での危険な衝突(コリジョン)を避けるための規定が、今季から導入された。走者が故意に捕手に接触しようとした場合はアウトになり、捕手がボールを持たずに走路をふさいだ場合は得点が認められる。審判員は悪質な衝突をした走者や、本塁上でブロックした捕手に警告を与え、危険極まりない衝突だと判断された選手は退場になる。NPBは本塁打の判断に限られていたビデオ判定を、今季から本塁でのクロスプレーにも導入した。