駆け込み猛アピールだ。楽天のドラフト3位、茂木栄五郎内野手(22=早大)が、オリックスとのオープン戦に「6番遊撃」でフル出場し、2打席連続本塁打をマークした。2回と4回に左へ右へソロを連発。開幕を前に、3安打3打点で打撃不振からの復活を印象付けた。オープン戦での新人の1試合2打席連発は44年ぶりの離れ業。開幕1軍どころか開幕スタメンへ、大きく前進した。

 またか! と言わんばかりに、茂木の打球を見届けたスタンドがどよめいた。4回1死、1ボール。インコースに来ると構えた直球が真ん中に入った。一撃で捉える。白球は右中間スタンドに突き刺さった。「しっかりスイングできましたね。完璧です」と自画自賛のオープン戦2号で、プロ野球史に名を刻んだ。

 この直前、2回2死の第1打席でも、粘った末の8球目に左越え先制ソロを放っていた。ルーキーのオープン戦1試合2発は史上5人目。同一試合の2打席連発は44年ぶりの快挙だ。梨田監督は「あの体から想像できないスイング」と絶賛。遊撃は後藤、哲朗、ドラフト2位吉持亮汰内野手(22=大商大)らが定位置を争っているが「ショートも十分いけるね。今日のホームランはインパクトあった」。「遊撃茂木」を開幕オーダー候補の1つとした。

 前日まではオープン戦通算打率5分9厘。不振に陥っていた。この日の朝、米村コーチから助言を受けた。「バットのヘッドが滑っている」。ヘッドが下がり、いい当たりでも打球が飛んでいなかった。試合前のティー打撃でグリップを指2本分あけてみた。「ヘッドが立つ感覚が、つかめたんです」。効果てきめん、当日に結果が出た。

 開幕まで10日を切り「とにかく食らいつくことだけしか考えてなかった。本当に必死です」。“がむしゃら弾”で、浮上のきっかけを「もぎ」取った。8回2死一、三塁では初球をきっちり左前に落とすシュアな打撃で、打点も「3」を刻んだ。

 同期の新人では、ドラフト1位オコエ瑠偉外野手(18=関東第一)が話題になっている。1月の合同自主トレから、「大卒と高卒の違いを見せつけたい」とひそかに負けん気をパワーに変えていた。歴史的2打席で、茂木は抜群の存在感を見せつけた。【鎌田良美】

<茂木栄五郎アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)2月14日、東京・小金井市。

 ◆球歴 5歳で野球を始め、小金井南中では武蔵府中シニアに所属。桐蔭学園では甲子園出場なし。早大では3年秋に首位打者。4年春の全日本大学選手権MVP。大学日本代表2度。

 ◆足と肩 50メートル走は6秒0、遠投102メートル。

 ◆サイズ・タイプ 171センチ、75キロ。右投げ左打ち。

 ◆名前 祖父は松五郎、兄で長男は龍五郎。「兄弟2人で合わせて10になるように、という意味もある」。姉も2人いる。

 ◆呼び名 チーム内では「五郎丸」「モギ」。

 ◆こだわり ユニホームのズボンはクラシックスタイル。「裾が長いのは自分に合わないので」。

 ◆憧れ 松井稼頭央。小学生時代に西武ドームで見て以来、尊敬。

 ◆座右の銘 「何事にも挑戦」。

 ◆趣味 映画観賞。

 ◆理想の女性 清野菜名。

 ▼ルーキー茂木が2打席連続本塁打。ドラフト制後、オープン戦で新人の1試合2本塁打以上は72年3月29日佐々木恭(近鉄)73年3月15日小田(ヤクルト)89年3月11日鈴木(日本ハム)03年2月23日下山(近鉄)に次いで5人目。14年井上(ロッテ)が2試合にまたがって2打席連発を記録しているが、新人が1試合で2打席連発は72年佐々木恭以来、44年ぶり。