甲子園で行われているセンバツ高校野球は準々決勝が終わり、いよいよ大詰め。野球評論家の西本聖氏に印象に残った投手を聞いた。

 -ズバリ、西本さんが「いいな」と思った投手は

 西本氏 左腕だと木更津総合の早川隆久くん。右腕だと創志学園の高田萌生くんですね。2人に共通しているのは非常にバランスの良い投げ方をしているということ。早川くんを例にすると、軸足の左足でしっかりと立つことができている。そこから体重移動をして踏み出した右足が動かない。投げ終えた後、右足一本で立つことができています。これはバランスの良い証拠です。バランスが悪いと左投手の場合、三塁側に体が倒れてしまう。高田くんの場合もそう。彼の場合はバランスが悪い時もあるが、良いときは素晴らしい。だからハマった時は150キロ近いすごいボールを投げていました。

 -将来が楽しみ

 西本氏 早川くんは180センチあるし非常に楽しみ。フォーム、バランス、今の時点では完璧に近い。

 -大阪桐蔭の左腕・高山優希投手も注目の左腕だった

 西本氏 腕の長さが印象に残りました。ただ、テークバックの時に左腕が三塁側に入り過ぎることと、投げる時に帽子がひんぱんに落ちる。この2点が気になりました。左腕が三塁側に入り過ぎるとその後、肘が前に出にくくなる。彼のフォームを見ていると後ろが大きく前が小さく感じました。本来はその逆、後ろを小さく前を大きくするのが理想。

 -確かに帽子をよく飛ばして投げていました

 西本氏 インパクトがあるというか高校生らしくていいんですが、帽子が飛ぶということは頭を振って投げているということ。頭より腕を振らないといけない。対照的に木更津総合の早川くんは帽子をちょこんと頭に乗っけてるだけのようなかぶり方なのに落ちない。バランスが良いということです。

 -最近の高校野球を観て感じることは

 西本氏 いろんな情報が入りやすくなって技術も上がっているしトレーニングの方法も変わってきた。体も大きくなっている感じがします。でもやはり大事なのは基本。投手の場合はいかにアウトロー(外角低め)にしっかり投げることができるか。これができれば変化球は自然と曲がるようになります。

 -今の高校生投手はいろんな変化球を投げます

 西本氏 プロ顔負けですね。でもやはり基本はアウトロー。原監督時代の巨人に臨時コーチに招かれたことがありました。久保裕也(現DeNA)を見て欲しいと言われたので「ブルペンでストレートだけ投げなさい」と指導しました。変化球は投げさせませんでした。すると70球を超えたあたりで「スライダーを投げていいか」と聞いてきたので「100球投げ終えるまでダメ」と答えたんです。彼の場合、ストレートがシュート回転して抜けるボールが多かった。だからそれを修正するためにアウトコースに真っすぐだけ投げ込ませたんです。その後スライダーを投げさせたらすごく曲がった。アウトローに行くという投げ方を体で覚えれば、自然に変化球も良くなるということなんです。僕も現役時代はブルペンでまず直球を100球。変化球はその後に投げたものです。高校生もまずはアウトローを磨いてほしいですね。大阪桐蔭の高山くんもアウトロー、つまり右打者の膝元にクロスを投げ込む練習をすればいい。そういう練習が大事だと思います。帽子も脱げなくなると思います。

 ◆西本聖(にしもと・たかし) 1956年(昭31)6月27日生まれ、愛媛県出身。松山商から74年ドラフト外で巨人入り。2年目に1軍入りを果たすと77年に8勝を挙げ、80年からは6年連続で2桁勝利をマークするなど巨人の主力投手として活躍した。81年に沢村賞。中日に移籍した89年には20勝を挙げ最多勝。その後オリックスでもプレー。最後は94年、巨人で現役引退した。通算504試合に登板し165勝128敗17セーブ、防御率3・20。引退後は阪神、ロッテ、オリックス、韓国ハンファで投手コーチを務めた。今季から日刊スポーツ評論家に復帰。