エースの背中がチームを突き動かした。楽天則本昂大投手(25)が、8回2失点11奪三振と三振の山を築いた。開幕から3試合連続の2桁奪三振は94年野茂(近鉄)、10年ダルビッシュ(日本ハム)以来3人目で、3連勝とのダブル達成は初めて。チームも3連勝で、ヤンキース田中を擁した13年10月13日以来の単独首位に立った。

 マウンドでほえた。感情がむき出しになった。8回2死、2ストライク。則本がこの日最後に投じた136球目に、エースの真骨頂が詰まっていた。内角高めの147キロ直球に、日本ハム近藤のバットが空を切る。11個目の空振り三振で、開幕から3戦連続2桁奪三振という記録を刻んだ。「7回に、自分のわがままを通して続投させてもらったんです。チームの勝利を優先して、普通なら代わるところ。そういう中で三振が取れたという気持ちです」。ありったけの力で右手とグラブを打ち鳴らした。

 諦めなかった。序盤は直球が走らず、変化球中心。「初回からどんどん行くのが自分のスタイルなのに、波に乗れなかった」と先制を許し、味方の逆転後も同点打を浴びる苦しい展開だった。5回までに102球を要し、三振は4。それでも「辛抱強く」と踏ん張るうちに、直球は本来の威力を取り戻した。7~8回は4連続を含む5奪三振。岩隈、田中と続いた楽天エースの系譜を受け継いだ右腕。開幕直前には「後輩が自分の背中を見て、『則本さんみたいになりたい』と思えるプレーを、マウンドでしたいんです」と誓った。味方打線の援護を呼ぶ力投こそが、その答えだった。

 スタジアムの流れを変えられる三振が好きだ。「勝利には直結しないかもしれないけど、チームに活気を与えることができる。僕の中では大事に思っています」と独自の美学を持つ。11個の三振で相手の反撃意欲を断ち切り、チームを13年以来の単独首位に押し上げた。梨田監督からは、期待も込めて年間での貯金10個を期待されている。「辛抱強く投げられたことが今後に生きると思う。次は、安心させるピッチングでチームの勝利に貢献したいですね」と誓った。3年前、先輩田中の背中に学び育った右腕は、誰もが認めるエースに成長した。【松本岳志】

 ▼開幕投手を務めた則本が3試合連続2桁奪三振で3勝目。14、15年と2年連続奪三振王の則本だが、2桁奪三振を3試合続けたのは初めてになる。開幕投手が開幕戦から3試合連続2桁奪三振は94年野茂(近鉄)10年ダルビッシュ(日本ハム=5試合連続)に次いで3人目。ただし、3試合目までの勝敗は野茂が1勝1敗で、ダルビッシュも1勝1敗。開幕戦からオール2桁奪三振で3連勝は則本が初。