新たな領域に入った-。日本ハム大谷翔平投手(21)が、楽天10回戦でDHが解除され、「6番投手」として“リアル二刀流”で先発出場した。パ・リーグの公式戦で指名打者を使わずに投手として先発するのは4年目で初めて。最速161キロを2球マークするなど直球が走り、7回を4安打1失点で3勝目を手にした。打っても3安打1打点をマークし、打席に立った試合での連続安打を、自己最長の11試合に伸ばした。

 「6番・投手・大谷」。球場内にアナウンスが流れると、スタンドがどよめき、一拍おいて歓声が湧き起こった。「DHで出る選手よりも打たなきゃいけないというプレッシャーはかかるけど、自分を助けるのも自分。それで勝ちもついてくるし、良かったと思います」。7回4安打1失点&3安打1打点。歴史的な挑戦で最高の結果を出した。

 マウンドに上がるよりも先に、打席を迎えた。初回から打線がつながり、2死二塁で出番がきた。一塁ゴロに倒れ、イニング最後の打者となった。駆け抜けた一塁ベース付近でドリンクを一口飲み、2球の肩慣らしでマウンドへ向かった。だが「キャッチボールをしないで行ったイニングもあるけど、したから球がいくとか、そういうことはないです」。2死から茂木に四球を与えたが、ウィーラーを三塁ゴロに仕留めた。首脳陣の心配をよそに、涼しい顔で無難に立ち上がった。

 6回には注目ルーキーのオコエと初対戦。「空振りを狙った」。この日最速タイの161キロ。バットには当てられた(三ゴロ)が、今季は影を潜めていた相手打者を圧倒する雰囲気が、ようやく出始めた。「徐々に良くなってきていると思います」。苦しんでいた「投手・大谷」にも、復調の兆しが見えた。

 試合前のミーティングはバッテリーものが中心で、打者として楽天釜田対策はおろか、「スイングも1回もしていない」状態だった。それでも5回に右前打を放ち、7回には右へ適時二塁打をマーク。栗山監督は「踏み込んで打ちにいったのは良かった。うれしかったし、感じるものがあった」。交流戦に限れば、二刀流での出場は昨年までもあった。だがピッチングを気にしすぎて、打席で本来の力を出すことができていないと感じていた。その“欠点”がなくなっていた。

 前回の登板が終わった後に、この日の“リアル二刀流”起用は伝えられていた。栗山監督は「2つやるのは大変だし、ばたつく。それは別として単純にいい打者を置こうと」と打席に立たせた理由を説明した。31日からは交流戦が始まる。セ・リーグの主催試合では指名打者は採用されない。投打ともに輝きを見せる背番号11の存在感はさらに増す。大谷は「言われたときに、結果を残す準備だけはしていきたいです」と堂々と言ってのけた。【本間翼】

 ▼大谷が6番投手で先発。パ・リーグがDH制を採用した75年以降、DHを使わずに投手を打順に入れるのは98年10月10日西武以来、5度目。過去4度は優勝決定後の西武が日本シリーズ対策として9番に投手を入れたもので、投手の打撃を期待してDHを使用しないケースは初めて。DHを使わずに先発した投手では、90年工藤が勝利投手、92年渡辺久が安打を打っているが、「勝利+安打」は大谷が初めてになる。

 ▼パ・リーグ投手の猛打賞は、DH制のない交流戦で10年5月5日涌井(西武)が記録して以来。日本ハムの投手では、DH制以前の74年9月22日ケキッチ以来、42年ぶり。日本ハムの日本人投手としては東映時代の72年9月22日金田以来の猛打賞だった。