覚せい剤取締法違反(所持、使用、譲り受け)の罪に問われた元プロ野球選手清原和博被告(48)に、東京地裁(吉戒純一裁判官)は今日31日午後、判決を言い渡す。17日の初公判で検察側は懲役2年6月を求刑した。覚醒剤事件の初犯は執行猶予付き判決となるのが普通だが、清原被告の場合、弁護側はより厳しい保護観察付き執行猶予の判決を求めている。裁判官の判断が注目されている。

 初公判で、清原被告は弁護側の被告人質問に対し、「保護観察ということを弁護士さんに聞き、国の薬物更生プログラムがあることを知りました」と述べ、「更生プログラムを受けて何が何でも更生したい」と決意を明かした。

 覚醒剤使用事件の初犯は、通常なら執行猶予付き判決を言い渡される。被告人自ら保護観察付きを求めるのは極めて異例だ。

 薬物事犯に詳しい小森栄弁護士は、清原被告のいう国の更生プログラムについて「執行猶予期間が終わるまで、定期的に保護観察所に出向いてテキストを使った教育を受け、そのときに簡易尿検査を受ける」と、内容を説明する。簡易尿検査は摘発が目的ではなく、検査を受けることで使用しないという意思を継続強化することが目的だ。

 果たして清原被告は希望通り保護観察付きの執行猶予判決を受けることができるのか。小森弁護士によると、2014年覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けたのは9528人。うち執行猶予付き判決は3686人だったが、単純執行猶予が3247人で保護観察付きは438人にすぎないという。

 「親がいない、親族がいない。親がいても監督能力が不十分といったケースがほとんどです。清原被告には当てはまらないと思います」(小森弁護士)。薬物への依存性、常習性が高く、懲役3年が求刑されたASKAは、保護観察付きの判決となる可能性も五分五分とされたが、単純執行猶予だった。

 仮に保護観察付き判決となったら、交通事故やけんか、万引など、割と軽微な犯罪でも執行猶予は取り消され、実刑に切り替わる。通常の執行猶予に比べて厳しい。初公判で強い覚悟をのぞかせた清原被告。司法記者クラブでは判決後の会見を申し入れているが、今のところ、清原被告側から明確な返答はない。

 <法務省のプログラム>

 法務省によると、薬物依存症の治療プログラム付きの保護観察処分を受けた人は357人(2014年)。保護観察付き執行猶予の判決言い渡しを受けた人の中で、薬物事犯の対象者が受けることができる。

 法務省の保護観察対象者向け「薬物再乱用防止プログラム」は5回の教育課程で、3~6カ月かけて進める。個人、グループでの対話、依存症のメカニズムを学び、回復を目指す。5回の参加は義務。参加しなければ、執行猶予が取り消される場合もある。

 プログラムでは尿検査も行う。薬物依存症治療の病院では一般的に尿検査で陽性反応が出ても、回復を重視し、通報はしない。プログラムでは、ダルクや依存症治療の専門医療機関への橋渡しも行う。