中京学院大(東海地区)のドラフト1位候補、吉川尚輝内野手(4年=中京)が、初出場で日本一に王手をかけた。初回に右中間へ先制の適時二塁打を放つと、2-4から1点を返した9回2死一、三塁で勝負を避けられ四球。続く石坂友貴内野手(3年=中京)の逆転2点適時打につなげた。

 吉川には、覚えのない経験だった。9回表に1点を返し、なおも2死一、三塁で回った打席。近藤正監督(68)に「お前で終わるな」と送り出された。だが勝負球は1球も来なかった。

 大学初、野球人生でも記憶にない敬遠気味の4球連続ボール。「頼んだぞ」と続く石坂に声をかけ、戸惑い半分、打てなかった悔しさ半分で一塁に走った。先制打の強烈な印象から生まれた“敬遠”。逆転の走者を得点圏に進めることを承知で、勝負を避けさせた。ここで石坂が中前にはじき返し、試合をひっくり返した。

 これがドラフト1位候補の存在感だ。打率4割1分2厘の成績を超える勝負強さで、試合の流れを変える。岐阜県リーグ戦から注目されたが、まだプロは冷静だった。能力の高さ、プレーの華は認めても、攻守両面で即戦力遊撃手になれる可能性には疑問符がついた。神宮4試合の活躍で、吉川がプロの疑問に答えを出した。この日も中日落合GMや広島苑田スカウト統括部長らが視察。最後まで目が離せない選手になった。

 93年青学大以来の初陣優勝に王手。「まず1勝と思って来た神宮で決勝まで来ることができた。チーム状態はいいです」。石坂ら後輩の活躍も、活力になる。大学最後の春を締めくくる決戦で、完全無欠の吉川の大会にする。【堀まどか】