甲子園に異様な光景が広がった。敵ファンの「帰れ!」コールを浴びながら、リプレー検証の結果を待った。セーフの判定は覆らず、サヨナラ負け。同点で迎えた9回2死二塁。ソフトバンク守護神サファテが左前にヒットを許した。中村晃の好返球で本塁クロスプレーに。捕手鶴岡は走路をあけるため、少しだけホームの後ろに下がった。その分、タッチが遅れた。コリジョンルールの難しさがあった。

 工藤監督 コリジョンはまだ確立されたわけじゃない。ビデオで決着がつく。後味は悪くないよ。こういうことも増える。審議して、アウトになれば、次の回になる。そこを抑えたら勝てるからね。

 指揮官は努めて冷静に振り返った。本来は危険なタックルやブロックの防止から生まれたルールだが、捕手が不利な立場に立たされつつある。それでも結果を静かに受け止めた。

 ただベンチ裏で大荒れだったのが、サファテだ。サヨナラ打の直前に、福留のハーフスイングを振っていないと判定されたことに激怒した。

 「三塁の塁審はバッターが福留じゃなければ、スイングを取っていただろ? バッターで(判定を)変えるな! リプレーをみて、反省してくれ! これじゃ、試合にならない」

 空振りなら、延長戦突入だった。それが一転し、今季4敗目。打たれたことよりも、判定に不満をぶちまけた。工藤ホークスは3点差以内のゲームは21勝8敗と接戦に強い。それが敵地の思わぬ雰囲気にのまれ、初戦を落とした。2年連続の交流戦1位確定はお預けとなった。【田口真一郎】