メークドラマの再現が始まった。巨人は3点リードの5回、束になってヤクルトに襲いかかった。先頭坂本の右前打が号砲。1死一塁から村田が右前打でつなぐと、橋本到、脇谷の代打中井が連続四球で押し出し。小林誠と長野が適時打を決め、打者9人で4得点を挙げた。高橋由伸監督(41)が「どうやって(点を)取ったか忘れたけど」と笑って振り返るほど自然にリードを広げ、12安打9得点で快勝した。

 貧打に苦しんできた今季がうそのような展開だった。チーム総得点は331でリーグワーストのままだが1番長野、4番阿部の新打線に変更後の5試合で28得点。高橋監督も「2人がうまく機能してくれている」と主軸の働きを評価した。

 加えて脇役も固まってきた。1軍再昇格の脇谷が2回2死二塁、山中の内角直球に詰まりながらも右前に落とした。「必死こいていきました」と先制打を決めた。FAで3年ぶりに巨人復帰も6月下旬に2軍落ち。再昇格したこの日の試合前、高橋監督から「大丈夫か? やれんのか?」と冗談交じりに聞かれ「はい!」と即答し、2安打1打点で先発起用に応えた。

 首位広島を大逆転するストーリーができはじめた。96年は7月9日の札幌円山球場での9者連続安打で快勝後、残り58試合で21勝7敗で首位浮上。FA加入した河野が中継ぎで6勝を挙げる活躍でラッキーボーイと化した。今年は24日のDeNA戦(横浜)に7者連続安打で快勝後、あの時と同じ10ゲーム差で広島を追う状況に。残り試合数は53試合と、ほぼ同じ。FA移籍組の脇谷と大竹寛の活躍で、ここまで3勝1敗と同じペースを刻み始めた。

 高橋監督は「勝って少しでも差を縮められるように」と気を緩めない。ラッキーボーイ候補の脇谷については「やっと期待に応えてくれた」と目を細めた。メークドラマ第2章の幕が開いた。【浜本卓也】

 ◆96年のメークドラマ 7月9日広島戦(札幌円山)の2回に9者連続安打を記録し快勝。36勝36敗で勝率を5割に戻した。巨人はこの時点で首位広島と10ゲーム差の3位だったが、そこから快進撃が始まり、8月20日横浜戦に勝って首位に浮上。7月10日~8月20日の巨人は5連勝以上を2度記録して21勝7敗、勝率7割5分をマークした。129試合目の10月6日に中日を下してリーグ優勝を決め、最終77勝53敗で7月6日につけられていた最大11・5ゲーム差を逆転した。