甲子園V腕が疲れ知らずの快速球を連発した。U18(18歳以下)アジア選手権(30日~9月4日、台湾・台中)に出場する高校日本代表の作新学院(栃木)今井達也投手(3年)が、8回から救援登板。大学日本代表のドラフト候補生を最速151キロの直球で押し、2回で4者連続を含む5三振を奪った。甲子園初戦(2回戦)から6試合連続で150キロ台を計測。チームは0-5で完封負けも、投手陣は2回以降、無失点に抑えた。高校代表は今日28日、台湾へ出発する。

 作新学院・今井が7番手でマウンドへ上がると、奪三振ショーが始まった。「大学生相手に打たれるのは当たり前。自分の一番自信のあるボールを多めに使おうと思いました」。亜大・北村にいきなり150キロの直球でストライクを決めた。駆け付けた2万590人の観客からこの日一番の歓声がわき起こった。

 カウント1-2からこの日最速タイの151キロを外角に決めると、北村は手が出なかった。続く法大・森川は見逃し、東北福祉大・楠本も149キロで空振り。9回先頭の日大・京田まで、4者連続三振を奪った。京田は「近くで見るとかわいらしい顔をして細いのに、あんなピッチャー対戦したことがない。ボールの威力が違うとみんな言っていた」と舌を巻いた。

 2回を1安打無失点、打者7人から5三振を奪った。決め球はすべて直球。全36球のうち150キロ台は8球を数えた。ほんの1週間前まで甲子園を戦い、5試合41イニング、616球を投じたとは思えない快投だ。甲子園終了後は2日間ノースロー。柔軟などを入念に行い、決勝の3日後に代表に合流すると、いきなりブルペン入りして周囲を驚かせた。「日本一になった投手として、連投できるんだぞということを見せたかった。チームに刺激を与えたかった」。甲子園優勝投手のプライドが突き動かしている。

 スカウト陣の評価も上がる一方だ。楽天長島スカウト部長は「間違いなく1位。重複する」と言った。小枝守監督(65)は明言しなかったが、アジア制覇を目指す上で、今井を守護神として起用することも考えられる。今井は「分かっていても打てない、空振りする真っすぐを求めていきたい。甲子園を勝っても緩むことなく、アジア一を取りたいです」と言った。どこまでもストイックなタフネス右腕が、国際舞台でも躍動する。【和田美保】