今秋ドラフト1位候補で最速153キロ右腕の桜美林大・佐々木千隼投手(4年=日野)が、今春からの連続イニング無失点を53回に伸ばし、巨人菅野(東海大)が持つリーグ記録に並んだ。だが、記録更新がかかった日体大戦の4回2死から失点。延長12回まで6安打7奪三振2失点で、勝敗はつかなかった。チームは延長14回タイブレークの末に敗れ、今季初黒星を喫した。

 球界を代表する右腕に肩を並べても、佐々木千の表情は暗かった。記録更新のかかった4回、2死から四球を与えて二盗を許した。次打者には、甘く入ったフォークを左前に運ばれた。この日浴びた初安打が適時打となり、4月23日東海大戦の5回以来となる失点。「抑えれば(記録更新)と分かっていた。勝ったら素直に喜べたかもしれないけど、負けたので何とも言えない」。12回155球を投げた自身に黒星はつかなかったが、チームの敗戦につながった失投を悔やんだ。

 崩れたのは4回だけだった。5回以降は最速150キロを計測した直球に、スライダーやシンカーなど多彩な変化球も織り交ぜて三塁を踏ませなかった。「ボール先行になって、今シーズンは調子が良くない」という中で、打たせて取る技術も身につけた。

 元プロの教えで進化を遂げた。1、2年時は元巨人の桑田真澄氏、昨年からは元横浜の野村弘樹氏が特別コーチを務め、指導を受けた。「桑田さんに『もっとインコースを使ったら?』とアドバイスしてもらって、投球の幅が広がった。野村さんには、リリースポイントを前にするために体が開かないフォームを教わった」。課題だった制球が安定し、球速も入学時から10キロ以上アップ。今年は大学日本代表にも選ばれ、7月の日米大学野球選手権では開幕投手を任された。

 ドラフト1位競合と言われ、この日は7球団のスカウトが視察した。阪神は和田SAら7人態勢で熱視線を送った。巨人山下スカウト部長は「大学BIG3? 全員欲しいよ」。創価大・田中正義投手(4年=創価)、明大・柳裕也投手(4年=横浜)とともに、各球団の評価は最上位だ。プロ志望届は提出済み。菅野らが持つ年間7完封のリーグ記録にも王手をかけている。都立校出身の右腕は、運命の日まで再びゼロを並べ続ける。【鹿野雄太】

 ◆佐々木千隼(ささき・ちはや)1994年(平6)6月8日、東京・日野市生まれ。小2から日野イースタンジュニアで野球を始める。ポジションは主に三塁手。小6から投手。三沢中では軟式野球部に所属。ポジションは投手、三塁手、外野手。日野では1年夏に三塁の控えとしてベンチ入り。3年春からエース。高校通算33発。桜美林大では1年春に初登板。181センチ、83キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄2人。

 ◆菅野の53回連続無失点ストップ 4年春の11年日体大戦。9回、先頭に右中間二塁打を許した菅野は、次打者の投ゴロを三塁へ。しかし判定はセーフ(野選)で、無死一、三塁。挟殺プレーで三塁・坂口が落球し三走が生還した。0-1のサヨナラ負けに、菅野は本塁脇で膝をつき、しゃがみ込んだ。自責点は0。同年秋のドラフトで、菅野は日本ハムと巨人から1位指名を受け、日本ハムが抽選勝ち。菅野は入団を拒否し、翌年のドラフトで巨人から指名を受けて入団した。