今秋ドラフト1位候補が早くも球界のエースと肩を並べた! 今秋ドラフトで1位競合が確実の桜美林大・佐々木千隼投手(4年=日野)が東海大を3安打完封し、巨人菅野(東海大)らが持つ年間7完封のリーグ記録に並んだ。14年春に1部昇格後、東海大に勝利したのは初。ネット裏では国内8球団が集結し、巨人は最大10人のスカウトが視察した。20日のドラフトを前に、最速153キロ右腕の評価は上がる一方だ。

 佐々木が、やっと笑った。9回2死二塁。東海大・平山にスライダーを中前へはじき返された。一瞬焦りの表情を浮かべたが、中堅手が本塁へ好返球しゲームセット。佐々木は、雨の上がった空へ両手を突き上げた。今季3完封で、巨人菅野らのリーグ記録に並ぶ年間7完封を達成。「気合が入った勝利だった。菅野さんに並んだことより、東海に勝てたことがうれしいです」と喜びを爆発させた。

 鬼気迫る姿で責任を果たした。14年春に1部に昇格後、東海大には未勝利だった。津野裕幸監督(45)は「千隼は苦しんだと思う。近寄りがたい、あんな雰囲気は初めてだった」と教え子を思い、涙を浮かべた。初回にこの日最速の147キロを計測。スライダー、フォークに、得意のシンカーで打ち気をそらした。佐々木は「集中力を切らさないようにした」と、ベンチでは一言も発さず次の回に備えた。3安打6三振。連打は許さなかった。

 9月25日の日体大戦で、連続イニングの無失点記録を53回に伸ばし、巨人菅野に並んだ。次は完封記録が期待される中、1日の帝京大戦は暴投などで自滅した。「変化球でかわせるだろうという思いもあって、逃げに回っているような姿を見せてしまった」。翌2日はベンチを外された。1人でグラウンドに残り、フィールディング練習を繰り返した。ブルペンでは直球だけを投げ続け、打者へ向かう気持ちを取り戻した。

 今夏は大学日本代表の柱としても活躍。最速156キロ右腕の創価大・田中正義投手(4年=創価)に迫るほど、評価は急上昇した。20日に迫るドラフトに向け、「自分の仕事をする場所が決まるのはすごく楽しみ。今日は、とにかく必死にやれて良かったです」と端正なマスクをほころばせた。日本ハム大谷、阪神藤浪らの黄金世代にまた1人、大物右腕が加わる日が近づいている。【和田美保】

<佐々木千隼(ささき・ちはや)アラカルト>

 ◆球歴 小2から野球を始める。三沢中では軟式野球部に所属し投手兼内野手。日野(西東京)では1年夏からベンチ入りし3年春からエース。3年夏は8強で高校通算33発。桜美林大では1年春に初登板。リーグ通算22勝11敗。

 ◆好きな選手 レンジャーズのダルビッシュ有。桜美林大で特別コーチを務める元横浜の野村弘樹氏を尊敬。

 ◆好きな食べ物 肉とすし。

 ◆球種 最速153キロの直球とスライダー、フォーク、チェンジアップ、カットボール、ツーシーム、カーブ。

 ◆サイズ 181センチ、83キロ。50メートルは6秒2。遠投110メートル。

 ◆家族 両親と兄2人。