今季不敗のリアル二刀流だ。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦で、日本ハム大谷翔平投手(22)が「8番投手」で出場し、投げては最速162キロを軸に7回1安打無失点の快投。ポストシーズン史上初のDH解除となった打席では、5回に先制点につながる中前打、6回にはプロ初の犠打も成功した。投打で出場した試合は今季8戦8勝。チームは宿敵ソフトバンクに快勝し、アドバンテージを含めて2勝を先行した。

 盤石だった。連勝で札幌に乗り込んできた相手の勢いを受け止め、完全に分断した。

 大谷 使ってもらったからには期待に応えたいし、それを超える活躍をしたいと思っています。

 「8番投手」のリアル二刀流。頂上決戦の主役は、地元スタンドの思いを裏切らなかった。

 胴上げ投手となった9月28日西武戦の快投に、アレンジを加えた。先制点が許されない緊迫の舞台。「フォークが(抜けて)半速球になるのが嫌」。前回同様、変化球はスライダーを中心に組み立てた。リードを奪う5回まで、変化球35球のうち31球がスライダー。さらに、西武よりも「粘ってくる打者が多い。(三振を)ムキに取りに行かない」と、打たせて取るスタイル。最速は前回を上回る162キロだが、15三振を奪った前回とは球種が同じでも内容は違った。

 5回、前打者レアードが左翼フェンス直撃打で出塁すると、打者としてのスイッチも入った。「試合を決めるポイントだと思った」。ソフトバンク武田の初球145キロを中前にはじき返し、好機を拡大した。併殺を避けるため「センターラインは外そうと思った」。意図通りに打球は飛ばず、「いい打席ではない」と苦笑いしたが、大量点への足掛かりになった。

 6回にはプロで初の送りバントも成功。投打で出場する「リアル二刀流」は、今季8戦全勝と不敗神話も継続した。「打席に立つことによって、マウンドで打たれる確率が高くなるとは思ってないです」。大谷の本能は、二刀流出場でこそ覚醒する。「どうやったら、野球少年に戻るかな」。序盤に苦しんだ大谷を復調させるため、栗山監督が悩んだ末に踏み出したのがDH解除。狙いは的中した。

 お立ち台に上がった大谷は「打席で増井さんを援護できるように頑張りたいです」と、今日13日の第2戦出場を“公開直訴”。「初戦が大事とは思ってましたけど、勝った今は、明日が大事」。193センチの野球少年は今、急激に成長している。【本間翼】

 ◆ポストシーズンのDH解除は初 大谷が8番投手で先発。パ・リーグのプレーオフ、CSでは前後期の優勝チームが対戦した75~82年を含めDH制を採用しているが、今年の1Sまでの108試合は全球団がDHを使用。日本シリーズでもDH制を採用した85年の全試合と87年以降のパ・リーグ本拠地では全球団がDHを使っており、ポストシーズンでDH解除は初めて。また、ポストシーズンで先発投手が9番以外の打順を打つのは日本シリーズの02年西武以来(9人制の第1戦で7番松坂、第2戦で8番石井)で、DH制のないセ・リーグを含めプレーオフ、CSでは初。

 ▼大谷が5回に中前打。パ・リーグのプレーオフ、CSで、投手として登板して安打は、74年第1戦の三井(ロッテ)以来42年ぶり。