ロッテは17日、創価大・田中正義投手(4年=創価)のドラフト1位指名を決めた。QVCマリンで、伊東監督も交えて5時間近くスカウト会議を実施。1位は即戦力投手に絞る中で、桜美林大・佐々木千隼投手(4年=日野)との二者択一となった。最終的に田中に決定。会議後、公表した。これまでの“隠密ドラフト”から一転、3日前に早々と明らかにした。

 スカウト会議後、いったんは会見場を離れた松本編成部長が「追加があります」と、すぐに戻ってきた。直前の会見では、佐々木の名前も挙がっていた。再び集まった報道陣に「田中で行きます」と単純明快に宣言した。近年は、指名の瞬間まで明らかにしないだけでなく、他の候補をにおわせ“煙幕”を張ることもあった。それが、ロッテとしては異例の3日前公表。戦略を180度変えてまで、最速156キロ右腕に誠意を伝えた。

 松本部長は「4、5球団は」と、当然ながら競合を覚悟する。それでも指名に踏み切る背景には、涌井、石川に続く先発が必要なチーム事情がある。2年連続Aクラスとはいえ、上位の日本ハム、ソフトバンクとの選手層の差は明らか。伊東監督は「弱点を埋めるのが課題。即戦力が当たるかどうか、大きな差。(競合でも)指名しなきゃいけない」と力説した。指揮官はFA補強も求めているが、球団の基本方針にFA補強はない。なおさら、即戦力投手が求められる。

 指名候補に投手の逸材がそろうことも後押しする。松本部長は「今年は豊富。まずは、そこ(田中指名)で勝負できる」と青写真を描いた。仮に田中を逃しても、外れ1位でも好素材が取れるという読みがある。もちろん、一番欲しいのは田中だ。球団は昨年から徹底マーク。15日には、編成トップの林本部長がリーグ戦を視察し、今春から重なったケガにも不安はないことを確認した。全体では、投手中心に7~8人、育成も2人ほど。その最上位に田中を狙う。【古川真弥】

 ◆ロッテの隠密ドラフト ロッテが1位指名を明言したのは11年の藤岡(東洋大)が最後。12球団で最も早く、5月に公表した。12年は藤浪(大阪桐蔭→阪神)を指名。競合相手の阪神、ヤクルト、オリックスは指名を公表していたが、ロッテだけしていなかった。13年の石川(東京ガス)は明言こそしていなかったが、予想通りの指名。14年中村(早大)は、投手の指名をにおわせながら一本釣りに成功。直前の会議で伊東監督が、岡本(智弁学園→巨人)との二者択一で選んだ。15年平沢(仙台育英)は、指名を公言し、予定背番号まで決めていた地元楽天との競合。平沢は楽天に行く心づもりが「8割」だったため、ロッテの指名に驚いていた。