同点の6回無死二塁、ミクロの攻防が接戦の潮目を変えた。

 打者の広島菊池は今季セ・リーグの犠打王。個数は23個で、パの犠打王である日本ハム中島の62個と比べれば格段に少ない。一方で、安打数181は堂々のリーグトップ。ボール球にも柔軟に対応でき、カープの打ち手を広げる攻撃的2番として機能した。

 初球はセーフティーの構えでボール。2球目はバントの構えでボール。3球目は、バントの構えを引いてストライク。2ボール1ストライクとなった。仕掛ける状況を作り上げて、再び送りバントの構えをした。

 日本ハムは、菊池のバントを想定して万全の準備をした。捕手の大野は外角に構えた。遊撃手の中島は、走者をけん制するため通常よりも若干早いタイミングで二塁に入った。一塁手の中田は強烈な前進でチャージをかけた。スローイング能力も非常に高い。走者のスタートを遅らせ、三塁でアウトを狙う。特殊なバントシフトを敷いた。

 思惑が狂い、逆手を取られた。増井の4球目は内角高めの抜け球。日本ハムとしては、本来は外角球で、一塁側へ転がせる狙いだった。一方の菊池は中田の突進を見て送りバントから、アドリブでバスターへ変更。一塁方向へ強打するつもりが、引っ張らざるを得なくなった。ボール球でも、巧打者だけに対応してしまった。打球は二塁のやや左に飛んだ。通常の守備隊形であれば、捕球できた。

 中島 バスターはないと思った。僕が(二塁)ベースに入ったら、打ってくるかもしれないとは思った。バスターになったからといって、ポジショニングを変えることはできないので。

 日本ハムは万策と踏んで選択したが「2番菊池」の勝利。幾多のアヤが重なり、大きな落とし穴になった。そこからミスの連鎖で勝負は決した。【高山通史、宮下敬至】