日本一を目指すマウンドに、最高の励みが届いた。プロ野球創設期の名投手、故沢村栄治氏を記念した「沢村賞」の選考委員会が24日、都内で開かれ、広島のクリス・ジョンソン投手(32)が選ばれた。外国人投手の受賞は64年の阪神バッキー以来で、タイトル獲得なしの選出は81年巨人西本聖以来。昨季の前田健太(ドジャース)に続く広島勢の受賞で、第1、2戦を連勝した日本シリーズに弾みがついた。

 ジョンソンの意気込みは早くも2年連続の沢村賞受賞に向いた。日本シリーズに向け、札幌ドームで軽い練習を終えた後、常にクールで表情を変えない助っ人が熱い言葉を口にした。

 「本当に光栄だ。石原とのコンビでなければ取れなかったし、打線、守備陣にも感謝したい。先発投手に与えられる最高の賞ということは知っていた。昨年前田が受賞して、このぐらいやれば取れるのでは…と思ってやってきた。来年もこの賞を取れるようにしっかり投げたい」

 外国人投手としては64年バッキー以来、52年ぶり2人目の受賞。助っ人左腕としては初の栄誉だ。今シーズン中に新たに3年契約を結び、19年まで広島でのプレーが約束されている。2年連続の受賞となれば、95、96年の斎藤雅樹(巨人)以来のこととなる。

 もっとも現在の目標は32年ぶりの日本シリーズ制覇に尽力することだ。第1戦で7回途中123球を投げ、1失点で勝利投手になった。次は中4日で第5戦登板が予定される。緒方監督は初戦の勝利後に球数を気にしたが、ジョンソンはキッパリと答えた。

 「まだ左肩に腕がくっついているので大丈夫だよ。あれからコンディションの回復に努めているし、まだ日にちがある。次に投げるときまでに100%の状態にしたい」

 広島に日本一をもたらしたい思いは、ナインと共有している。「こぢんまりときれいな広島の街を気に入っている。人々も気軽に声を掛けてくれる。レストランの場所を聞いても親切に教えてくれるし、店の人もやさしいから」。来日2年目ですっかり、地元に溶け込んでいる。祖母は日本人で「自分はクオーター。いつか日本でプレーしたいと思っていたし、今の状態は本当にうれしい」というジョンソンが、日本一へ、そして来季の大目標へ向かう。【高原寿夫】

 ◆沢村賞 不世出の大投手といわれる故沢村栄治氏(巨人)の功績をたたえ、1947年(昭22)に制定された。沢村賞受賞者または同等の成績を挙げた投手で、現役を退いた5人を中心とする選考委員会で決定する。当初はセ・リーグ投手を対象にしたが、89年から両リーグに対象が広げられた。受賞者には金杯と副賞300万円が贈られる。