日大が東洋大に4-3で逆転サヨナラ勝ちし、04年春以来25季ぶり23度目の優勝を決めた。1点を追う9回裏に同点とし、なおも1死二、三塁で長沢吉貴外野手(2年=佐野日大)が右前適時打を放った。ドラフトで中日から2位指名を受けた京田陽太内野手(4年=青森山田)は好守で引っ張り、涙が止まらなかった。日大は11月11日から始まる明治神宮大会(神宮)に出場する。

 長沢のたたきつけた打球が二塁手の前で大きくはね、頭上を越えた。三塁走者がかえり、逆転サヨナラ勝ち。揺れる一塁側スタンドを背に、京田は苦労を分かち合った小保根誠主将(4年=履正社)と抱き合って泣いた。「今までのつらかったことが一気にこみ上げてきました。正直、ドラフトよりうれしい」。前回優勝した04年春から3度2部リーグに落ちた。今季延長は3勝負けなし。はい上がり、粘って優勝を手にした。

 初回に2ランで先制され、3回2死一塁では左越え二塁打を許した。3点目を阻止したのが京田だった。「この夏は徹底的に捕球からやった。その成果」。左翼手からの返球をカットし本塁へ絶妙な送球。追加点を防ぐと、終盤にかけて追い風が吹いた。見守った中日中田スカウト部長も「判断がしっかりしている」とあらためて称賛した。

 チームは打撃が一変した。春は本塁打ゼロだったが秋は6本。打率2割2分3厘から2割7分6厘にアップした。今夏からOBで巨人片岡の兄昭吾氏(38)が打撃指導にあたった。京田は7月から長沢に“弟子入り”。「タイミングの取り方がうまいから」と足の上げ方をまね、自主練習を共にした。殊勲の長沢は「京田さんから誘ってくれました。9回も『おまえで決めてこい』と言われ打ちたかった」。先輩後輩の垣根を越えた優勝だった。

 今季から、京田は主将の背番号「1」ではなく「10」を背負った。重圧を考えた仲村恒一監督(56)の親心だった。「日本一になって神宮で監督さんを胴上げしたい」。伝統校ゆえのプレッシャーや苦しみ。12年半ぶりの勝利をみな、かみしめていた。【和田美保】