侍ジャパンがタイブレークの攻防を制した。延長10回。無死一、二塁から始まった延長10回の守りに就くと、慌ただしくベンチが動いた。捕手大野がブロックサインで野手にシフトを伝達。6番手岡田は7番ヴァンダーミーアへの初球を投じるのと同時に内野手は一斉に動きだした。

 遊撃菊池は二塁、二塁手山田は一塁、一塁手中村晃は本塁方向へ猛チャージを仕掛けた。相手打者はバントの構えだったが、スライダーが外れ1ボール。2球目、今度は逆回転で内野陣が動いた。二塁手が二塁、遊撃手が三塁、三塁手松田と一塁手中村晃がチャージを掛けた。何が何でも三塁進塁を阻止する、特別シフトの「ブルドッグ」を敢行した。

 迅速な守備シフトが相手ベンチの混乱を誘った。オランダのミューレン監督は「バントのサインだったが、日本のチャージが非常に厳しく、打者の判断でバントをしなかった」と振り返った。最も重要な先頭打者を平凡な中飛で1死一、二塁とし、流れを引き寄せ、2死満塁から最後はランペを一飛に仕留め、無失点で切り抜けた。その裏に、1死満塁から大野の適時打で乱戦にけりをつけた。

 小久保監督も収穫を口にした。「1球を投げた後になったが、あんな場面でショートに菊池。(起用は)もっと他の場面を想定していたので申し訳ないです。なかなか簡単でない中で、しっかり練習通り、サインを出した」と話した。本番さながらの臨場感の中でシミュレーションができた。

 来春のWBCの詳細な大会方式はまだ発表されていないが、09、13年の大会ではタイブレークが採用されている。奈良原ヘッドコーチは「攻守ともに難しい。1球目は完全にシフトを敷いたから、2球目は打ってくることも想定できた。でも(ブルドッグを)1回、やっておく必要があった」と、サインプレーが侍の「武器」に加わった。【為田聡史】

 ◆今回の強化試合のタイブレーク 9回終了で同点の場合、10回からタイブレーク制。無死一、二塁から攻撃を始め、打順は9回終了時から引き継ぐ(走者は各回先頭打者の直前2人)。12回で決着がつかなければ引き分け。

 ◆日本代表のタイブレーク 過去の国際試合では08年北京五輪1次リーグの米国戦で実施。当時のルールは延長11回からタイブレーク。0-0の11回表に米国に一挙4点を奪われ、裏の攻撃で2点を返したが及ばなかった。