阪神は21日、オリックスから国内フリーエージェント(FA)宣言した糸井嘉男外野手(35)との契約が合意したと発表した。20日に移籍を決断した糸井が、オリックスと阪神球団に意思を伝えた。阪神は4年総額18億円とみられる好条件に、金本知憲監督(48)が「初めての恋人」と評した熱意が実って獲得に成功。金本監督は自身がFA移籍して優勝を導いた03年シーズンと重ね合わせ、糸井に「貯金20」分の活躍を期待した。

 吉報はラウンド中に届いた。阪神球団が主催するコンペに参加した金本監督は午後3時に糸井決断の報に触れる。11日の初交渉では自らテーブルに着き、「初めての恋人や」と口説き文句をぶつけた。熱望した男の加入に、思わず声を弾ませた。

 「最後の返事を聞くまでは落ち着かん部分があった。どの言葉が響いたのかな。甲子園球場が似合いそうな選手だし、中心になって、チームを引っ張ってほしい。優勝するために来てもらった。スピリットを見せてほしい」

 糸井1人で「貯金20」を稼ぐことも夢ではないという。指揮官は02年オフに広島からFA移籍した当時、自らにこんなノルマを課していた。「オレも来るときに、1人で10試合ぐらい、決勝打や逆転打を打てば、と思っていた。それで勝てば、上下で20は違う。5割のチームが貯金20になるわけだから。すごく大きいと思う。そういうところで打ってほしい。糸井の一打で決まったというね」。今季は得点力不足に苦しむ場面が何度も見られた。「あと1本つながっておけばいけたのに…、という試合がいっぱいあったから」。糸井が打つことで、今季の10敗が10勝に変わる。実質、貯金20の価値を生むことになる。

 金本監督は交渉の席で、糸井と本塁打の話題になったことを明かした。「ホームランの打ち方を気にしているみたいだね。少ないので、もう少し打ちたいと」。通算476本塁打を誇る指揮官とタッグを組めば、夢が広がる。自身が記録したトリプルスリーの可能性にも、大きくうなずいた。「十二分に持っていると思うよ。後はホームランだけ。甲子園は左(打者に)キツいけど、センター方向の打球は伸びる。狙ってほしい」。次々と言葉が流れ出た。糸井への期待は無限大だ。今オフの目玉補強が完了し、就任2年目の来季優勝への展望が開けた。【田口真一郎】

 ◆阪神のチーム打撃 今季はチーム打率と盗塁がリーグ最下位、得点と本塁打が5位など攻撃面が課題となった。14年首位打者、16年盗塁王、最高出塁率3度(11、12、14年)の糸井が加入すれば得点チャンスは拡大する。今季の糸井は得点圏打率3割1分3厘がリーグ5位、チームトップの殊勲安打24本がリーグ7位と勝負強さも兼ね備え、17勝21敗と負け越した1点差試合の改善を期待できそうだ。

 ◆03年の金本 広島から加入して1年目。打率2割8分9厘、77打点と平凡な数字ながら、殊勲安打22本は今岡、アリアスと並びチームトップと勝負強さを発揮してリーグVに貢献。主に3番打者で全140試合に出場し、赤星、今岡、アリアス、片岡、矢野らの打線に好影響をもたらした。