日本プロ野球トレーナー協会の研究会が2日、横浜市内のホテルで開催された。各球団のトレーナーが独自の研究報告を行うのだが、本年度はセ・リーグ球団の当番。ユニークさで目を引いたのが、中日の佐藤啓介トレーナーによる「吸玉(すいだま=カッピング)療法の実施報告」だ。

 この、聞き慣れない「吸玉療法」に佐藤トレーナーが注目したのは、8月のリオ五輪がきっかけだった。選手のパフォーマンスを向上させる手段として、08年の北京五輪、12年のロンドン五輪では「キネシオテープ」が流行した。今回は水泳で通算23個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプス(米国)が、肩に目立つ痕(あと)を残していた。レスリングのハミド・ソリアン(イラン)も、足に痕があった。おちょこのようなカップを患部や周囲にあてがい、空気を抜くと、キスマークのような痕がつくのだ。

 五輪史上に残る選手が、大一番で頼る。この事実にトレーナーの血が騒いだ。早速「吸玉療法」をフェニックスリーグ、秋季キャンプで「痛み」、「だるさ」、「張り感」を訴えた20代の選手12人に30回ほど施術。患部と周囲に2個以上、5分間、心地よい吸引力で行った。

 その後、施術を受けた選手にアンケートを取ると、実施後の症状改善があった選手が7人、なかった選手が5人だった。翌日の症状改善は、あるが3人、ないが4人。再度、吸玉療法を希望するかは、するが7人、しないが5人だったという。また、過去に経験したことがある選手も50%(6人)いた。

 吸玉療法は鎮痛、血管拡張、温熱、デトックスなどが期待されるが、筋肉の痛みを軽減するなどの医学的、科学的な実証論文は見つからなかったという。ただし、プラセボ(偽薬)効果は、否定されていないようだ。佐藤トレーナーは「論文で効果の証明はないが、治療手段になる可能性はある。背部から腰にかけては好印象」と、今後も研究を続けるという。