ああ、未来の中継ぎエース候補が…。阪神の来季5年目となる右腕金田和之投手(26)がオリックスに流出することが15日、分かった。FA移籍した糸井嘉男外野手(35)の人的補償を検討していたオリックスが候補を金田に絞り、阪神側に通達した。今日16日にも発表される。阪神にとっては分厚くしたい中継ぎ陣の中でも成長株の右腕を失うことになった。

 覚悟していたとはいえ、阪神が痛い代償を払うことになった。糸井の人的補償で来季5年目右腕の金田が移籍することが判明した。オリックスはほっともっと神戸で、2回目の検討会議を実施。福良監督は結論が出た会議後、阪神サイドに配慮して名前を伏せながら「人的補償に決めました。投手でいきます」と明言。「20代で140キロ後半は出る。うちでは中継ぎになると思う。来年の1軍戦力になってくれると思います」と対象選手のシルエットを明かした。

 オリックスは福良監督が台湾ウインターリーグの視察から帰国後の9日に、1回目の会議を開いた。阪神から届いたプロテクト28人の名簿から漏れた選手を協議。福良監督は「来年の1軍戦力になるかどうか」と判断基準を挙げ、ポジションや左右にこだわらない考えを示していた。そこで投手3人に絞り、金銭補償を選ぶ可能性も含みながら、この日までに候補選手を再調査していた。

 オリックスの長村球団本部長も会議後に「最低限のマナー」と選手名を明かさず、阪神球団に結論を伝えたことを明かした。ここまで獲得候補を検討する中で、福良監督と意見が一致していたという。「戦力に厚みを加えられる投手。真っすぐも変化球も1軍の戦力になりうる」と期待した。

 一方で阪神は将来のセットアッパー候補を泣く泣く譲り渡すことになった。金田はプロ2年目の14年、プロ初登板を含む40試合に登板。先発勝利を含む5勝を挙げた。ここ2年は10試合以下にとどまるが、力強い速球は魅力。若手が台頭するチームにあって、主力候補と期待される1人だった。

 プロテクト名簿の選定については金本監督の意向も反映しながら、慎重に作業を進めた。オリックスに提示した直後、四藤球団社長は「チーム編成を総合的に勘案して作成した」と話していた。福留や鳥谷、西岡らベテラン主力組はプロテクト。ただすべてをカバーすることは難しく、伸び盛りの右腕までは抑えきれなかった。

 これまでは07年オフの新井獲得に関する補償で赤松を、11年3月には小林宏獲得の代償で高浜を失った。3度目にして初めて、投手陣の流出。それもまだ26歳と若い投手が、FA制度のルール上、チームを離れることになった。

 ◆金田和之(かねだ・かずゆき)1990年(平2)9月18日、鹿児島県生まれ。都城商-大阪学院大。大学4年の春から秋のリーグ戦で6試合連続完封を記録。12年ドラフト5位で阪神入り。2年目の14年8月21日中日戦で、プロ初先発も果たした(勝利投手)。今季は1軍戦登板6試合ながら、ウエスタン・リーグでは28試合で4勝1敗、防御率2・72の好成績。184センチ、83キロ。右投げ右打ち。

 ◆FA補償 年俸Bランク(上位4~10位)とみられる糸井をFA獲得した阪神はオリックスに対し、金銭及び選手を補償することが定められている。人的補償では、阪神が外国人と任意に定めた28人の選手を除く選手名簿からオリックスが1人を選べ、さらに糸井の今季年俸(推定2億8000万円)の40%(1億1200万円)を補償する。オリックスが人的補償を見送り、金銭補償のみを選んだ場合は今季年俸の60%(1億6800万円)が補償される。

<糸井FA補償経過>

 ▼11月21日 FA糸井が阪神と契約合意したと発表。オリックスは金銭補償より人的補償を重視する姿勢を確認。ある関係者は「高額年俸者でも残っていれば取りにいく。鳥谷とか…」と具体名を挙げた。

 ▼11月25日 糸井のFA宣言選手契約締結がコミッショナー公示され、プロテクト名簿の提示期限が12月8日と決まる。阪神四藤球団社長は「与えられた時間は使うことになると思う」と語った。

 ▼12月6日 阪神がプロテクト28選手のリストをオリックスに提示。福留や鳥谷、西岡のベテラン主力組をリストに入れたことが判明。オリックス長村球団本部長は「投手か野手か分からないが、戦力になってもらえる選手を」と発言。