27日に開幕するNPB12球団ジュニアトーナメント(KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎ほか)に臨む楽天ジュニアが、10年ぶり2度目の優勝を狙う。攻守の要は、U-12(12歳以下)侍ジャパンに選出された砂頼人内野手(岩手・帯島小6年)。元巨人でU-12の仁志敏久監督(45)の「秘蔵っ子」だ。9日から中国で行われたアジア選手権優勝に導いた勢いそのまま、年末の日本一も狙う。

 東北、岩手にも侍がいた。その名も砂頼人。152センチ、45キロと決して大柄ではないが、眼光の鋭さは侍そのもの。年末の大一番を前に言葉をつむぐ。「侍として恥ずかしくないようにやっていきたい」。9日開幕のアジア大会では5戦中4戦で主に「8番二塁」で先発。ピンチを併殺で切り抜ける鉄壁の守備で、優勝に貢献した。

 U-12仁志監督の目に留まってから、シンデレラストーリーが始まった。八戸工大一高野球部OBの父善克さん(38)の背中を追って小1年から帯島スポーツ少年団で白球を追い、小3から始めた内野手でメキメキと頭角を現した。小6では岩手県大会を優勝し、8月の全国大会「マクドナルドトーナメント」に出場。同大会ではチーム事情で投手と捕手でしかプレーしていなかったが、観戦に訪れていた仁志監督に二塁手として見初められた。

 5人しか選ばれない監督推薦で1次選考を免除され54人に絞られた2次選考も突破。10月末に侍ジャパン入りを果たした。砂は「自分が選ばれるとは思ってなかった。びっくりした」と驚く。砂を推薦し、侍ジャパンの正二塁手として抜てきした仁志監督は「プレーぶりを見て直感でセカンドと決めた。何をやらせても器用だし、今回は見事にはまった」と意図を説明した。

 10月から砂は楽天ジュニアの活動も両立してきた。土日に行われる仙台市内での強化合宿に参加するには、岩手・洋野町の自宅から4時間かけて車で移動しなければならない。「両親の協力がないとできない。感謝しています。将来はプロになりたい」。楽天ジュニア出身でプロになった選手はまだいない。12球団トーナメントは、その扉を開けるステップとなる。【高橋洋平】

 ◆砂頼人(すな・らいと)2004年(平16)4月4日、岩手県洋野町生まれ。帯島小1年で帯島スポーツ少年団で野球を始める。152センチ、45キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、弟2人。

 ◆楽天ジュニア 東北6県規模で複数の選考から選出。今夏の甲子園に出場した東北(宮城)のエース左腕・渡辺法聖(3年)らOBから毎年、多数の甲子園球児が誕生している。仙台育英(宮城)の西巻賢二主将(2年)は、同チームのメンバーを誘って、育英に進学し今秋の東北大会優勝を飾った。現時点でプロ野球選手の輩出はなく、12球団全体で見ても20人しかいない。今年の楽天ドラフト1位の藤平尚真投手(横浜)はロッテジュニア出身。

 ◆NPB12球団トーナメント 05年の第1回大会から毎年12月下旬に開催され、小学5、6年生を対象にしたジュニアチームの日本一決定戦。3チームずつ4グループに分かれてリーグ戦を行い、各グループ1位の計4チームが決勝トーナメントに進出する。グループDの楽天ジュニアはDeNAジュニア、巨人ジュニアと対戦する。過去11回で最多優勝は巨人ジュニアの3回。使用球は軟式。今年のセ・リーグ新人王、阪神高山は05年にロッテジュニアで、楽天松井裕は07年に横浜ジュニアで出場した。