3兄弟対抗の成り上がりストーリーが始まる。巨人育成ドラフト5位の松原聖弥外野手(21=明星大)が6日、お笑い芸人の卵の兄・侑潔(ゆい)さん(25)から贈られた金色のゾウの置物を手に、川崎市のジャイアンツ寮へ入寮した。夢をかなえるという幸運のアイテム。父の秀樹さん(52)は販促クラウドサービス会社「SPinno」社長で、弟の涼雄(りょうた)さん(19)はラーメン屋開業に向け修業中という異能一家。家族の存在を刺激に、支配下登録を目指し奮闘する。

 3兄弟で一番輝く、巨人の星になる。育成の松原は金色のゾウを大事そうに抱えた。「兄が『夢をかなえるゾウなんだぞ』って渡してくれたんです。自称、夢のあるフリーターの兄が」。緊張の入寮初日。部屋のテレビの横にそっと像を置くと、不思議と心が落ち着いた。「願い事は、支配下登録を勝ち取ることと、その後に息の長い選手になることです。兄にも弟にも負けません」。力強い決意を携えて、プロ野球の世界に飛び込んだ。

 兄が、弟が、異なるプロの世界で戦っている。兄の侑潔さんは、芸人らを養成する太田プロエンタメ学院東京校を15年3月に卒業(6期生)。現在は研修生で、お笑いコンビ「ロングアイランド」の「ゆい」として、笑いの道を行く。弟の涼雄さんは広陵高で15年夏の甲子園に出場。「2番・右翼」で先発した初戦の三重戦で6打数2安打を放つも、野球の道には進まず、大阪市内の「九州らーめん亀王(きおう)」で修業の道に進んだ。松原は「正直、兄のギャグで笑ったことはありません。弟は2~3年後に自分の店を出すと言ってます。負けません」と刺激にする。

 夢を諦めなかった。甲子園出場のため大阪を離れ仙台育英に進むも、3年夏の甲子園はベンチ入りメンバーに入れなかった。それでも明星大で野球を続けドラフト候補に急成長。自分の道を進む強さは、会社社長の父から譲り受けた。「父は、会社は継がせない。他の道で俺を超えろ。自分の道を見つけろといつも言っていました」。首都大学リーグ2部では5季連続ベストナインと活躍。育成5位での指名を勝ち取った。

 弱肉強食のプロ野球の世界。50メートル走5秒75の足を武器に勝ち抜きたいと明確なビジョンを持つ。「どうやって目立てるかが大事。守備、走塁を基本にします。正月も元旦から走っていました」。同期入団14人と兄弟2人の存在を刺激に、日々全力で挑む。【松本岳志】

 ◆松原聖弥(まつばら・せいや)1995年(平7)1月26日、大阪府生まれ。仙台育英(宮城)では3年夏に甲子園に出場もベンチ入りできずにスタンドで応援。首都大学リーグの明星大では5季連続で2部リーグのベストナインに輝き、昨秋の1部昇格に貢献した。今季から巨人に入団し、背番号は009。173センチ、70キロ。右投げ、左打ち。