一からでなく、ゼロからの再出発だ。昨季終了後、人間ドックで右胸骨の内側に腫瘍が見つかった。12月中旬、耳慣れない言葉を医師から聞き「終わった」と漏らした。後日、深刻な状況でなく、手術をしても3月下旬の開幕には間に合うと伝えられた。「最初は正直『もうだめだ』と思ったんです。あらためて説明を受けて、いける、やるしかないと思えました」。同26日に都内で手術を受けた。

 3日後に退院。病院を出て外の空気を大きく吸い込むと、迎えに来た聡子夫人らに言った。「練習するで」。予想外の第一声で驚かせた。内海は本気だった。急きょ手配したグラウンドに直行。患部に近い右腕は固定したまま、白球を握りしめ、軽く投げた。「いける」。もう1度、野球道を全身全霊でまい進すると腹が決まった。

 キャンプではカットボール習得に挑戦し、投球の幅を広げた。この試合では直球と変化球のコンビネーションで奪った21個のアウト中、12個がゴロアウト。高橋監督からも「何とか粘ってくれた。力も経験もあるので7回を乗り越えてほしかった」と最敬礼された。

 ベテランだからと優遇されることなく、病にも競争にも勝って結果を出した。「この勢いで勝ちを重ねて優勝できるよう頑張りたい。この1勝を自信に変え(ローテーションの)1枠を渡さず1年投げきりたい」。内海の野球人生第2章が幕を開けた。【浜本卓也】

<内海手術から開幕まで>

12・26 手術 テニスボール大を摘出「痛い」

   29 退院 病院から練習に直行

 1・ 5 自主トレ 沖縄で21日まで

 2・ 1 キャンプ カット習得励む

 3・ 4 オープン戦 4試合登板

 4・ 5 初登板 開幕ローテつかむ