BCリーグ福島ホープスの岩村明憲選手兼任監督(38)が、14日のホーム開幕戦(対福井、開成山)を前に、今季限りでの現役引退を発表した。被災地の福島を本拠地にしてプレーする意味をかみしめ、悲願のリーグ初優勝で選手としての有終の美を狙う指揮官に意気込みを聞いた。【取材・構成=高橋洋平】

 選手としての引き際を決断した岩村監督の表情はスッキリしていた。10日に都内と福島・郡山市内で会見を行い、引退理由を説明した。

 岩村監督 迷いもあったけど、決断するのは今かなと。14年にヤクルトを退団し、最初に福島ホープスに声をかけていただいた。自分の体が動く以上、まだまだ若い選手たちに負けないという気持ちがある以上、野球を続けたかった。でも、3年目になってどこかでけじめをつけないと、と思っていた。

 悲願のリーグ初優勝で、選手としての有終の美を飾る。1年目の後期に東地区で1位になったが、その後の地区プレーオフで敗退。2年目は前後期ともに東地区2位に終わった。

 岩村監督 去年もプレーオフに出てるけど、短期決戦に負けてしまう。メンタルの弱さが出ている。そういう部分をしっかり鍛えて、前期後期の通期で完全優勝を目指して、チーム一丸になって福島県民のためにやっていきたい。

 素直にそう思えるのは、楽天に在籍していた11年に東日本大震災を経験していたからだった。

 岩村監督 震災というものを経験した福島に、覚悟を持って選手が来てくれている。何で福島ホープスというチームがあるのか、というのを分かった上でプレーしなさいと選手たちには伝えてきた。野球で勝つことで、福島県に何かを返していきたい。球場に来たときにちょっとのことかもしれないけど、ストレス発散に野球という娯楽を使ってほしい。そういう気持ちは選手たちも分かっていると思う。

 ただ現状は厳しい。軽々しく叫ばれる「復興」とは違う現実を、県内の各地で何度も目の当たりにしてきた。

 岩村監督 試合を通じて、試合を開催していく中で、いろんな自治体の方々と話をさせてもらっている時に、実際にまだまだ復興が進んでないのが現状だと分かった。それを野球を通じて感じることができたのは財産。その財産はしまうものではなく、自分たちみたいな言える人間が誰かに伝えていく。誰かに語りかけて、周りを動かすように仕向けていくというのも福島ホープスの役割。この2年間、いい経験をさせてもらった。今後の野球人生、第2の人生に生かしていきたい。