阪神藤浪晋太郎投手(23)が8回1失点の力投で17年初勝利を挙げた。今季初登板の4日ヤクルト戦は自己最多の9四死球と乱れ、大乱闘を起こす要因となったが1四球としっかり修正。チームの3連勝と昨年5月7日以来の貯金2を導いた。2位に浮上した阪神は今日14日から甲子園で首位広島と3連戦。勢いに乗る両球団がぶつかり合う。

 心の波は終始、穏やかだった。8回を1四球で1失点。阪神藤浪はわずか97球で今季初勝利を決め「自分の中でスタートを切れたので良かった」と柔らかな笑みを浮かべた。前回4日ヤクルト戦は5回2失点ながら9四死球。畠山への死球で乱闘のきっかけも作る大乱調だった。「投げる間合いだったり、タイミング、リズムを意識して…」。セットポジションのグラブ位置も胸からベルト付近に変え、中8日で「藤浪晋太郎」を取り戻した。

 苦悩の昨夏、藤浪は人知れず早朝から座禅を行った。自身5連敗の最中だ。休日、大阪桐蔭野球部の同級生と京都・嵐山の天龍寺へ。座禅の時間に間に合わず“未遂”に終わると、今度は7月中旬の長野遠征中に善光寺へ向かった。両足を両太ももの上に乗せて座る結跏趺坐(けっかふざ)で20分間。セミの鳴き声が耳に障り、ジワジワ汗が噴き出る。集中が途切れそうになると、頭を下げて警策と呼ばれる棒でたたいてもらった。わらにもすがる思いで初体験した座禅は、心の整え方を教えてくれた。

 「暑いなとイライラするだけでダメだと思ったらそうではなくて、そう思ってしまっている心の波を少なくしていこう、と。そういう考え方は勉強になった」

 この日は1点リードの6回、2番梶谷に特大の同点弾を浴びた後も動揺なし。「大して慌てなかった」。新たな発見は体現されていた。前日12日に23歳の誕生日を迎え、金本監督が「ほぼ完璧でしょう」と絶賛する投球だ。DeNA戦で自身7連勝だ。チームは3連勝で昨年5月7日以来の貯金2。大黒柱が2位浮上に導いた。【佐井陽介】