医師免許を持つ、40歳の異色右腕が夢をかなえた。今春始まった総当たりの新人戦「フレッシュリーグ」で、東大・伊藤一志投手(3年=東海)が慶大戦に先発し“神宮デビュー”を果たした。1回を投げ2安打3四球4失点(自責1)。「不合格」と自己評価は辛口だったが、リーグ戦出場を目指す赤門のオールドルーキーの挑戦は続く。

 約20年越しの夢がかなった。「9番ピッチャー伊藤」。神宮球場に温かい拍手が起こった。「広いな」。40歳の伊藤が投じた最初の1球は、練習してきたナックルボールだった。最速は108キロで打者9人に2安打3四球4失点。「(投球の)採点はできません。不合格じゃないですか」と喜びより反省が口をついて出たが、ライナーに食らいつき、無我夢中で36球を投げた。

 高2の時、東大野球部が17季ぶりに単独最下位を脱出した。勝ち点を挙げるところをテレビで見てとりこになった。しかし、合格への道のりは遠く、浪人の末に都内の医大へ進んだ。「これまで10回は(東大を)受験した」(伊藤)が、途中で諦めたこともあった。友人の誘いで再度チャレンジを始めたのが34歳のころ。麻酔科の医師として働きながら勉強し、38歳で東大野球部へ入部した。