「もう絶対に無理だと思った。あと何カ月はもたない、と」。4月には右わき腹に重傷を負っていた。胸を締めつけたのは仲間への申し訳なさだ。「2カ月で2回目。もうこれ以上、チームに迷惑をかけるわけにはいかない」。首脳陣に思いを伝えた。「代わりはいない。出てくれ!」。認めてはもらえなかった。

 あの時、首脳陣が首を縦に振っていれば、連続試合出場は止まっていた。今も昔も、個人記録に固執したことはない。「試合に出る、出ないは自分で決めることじゃない」。必要としてくれるから、試合に出続ける。出続けるために早朝からウエートトレに励み、ストイックな食事制限も続けている。

 記念日は全4打席で出塁。2安打2四球1盗塁で2得点に絡んだが、表情からにじみ出る満足度はゼロに等しい。チームを勝利に導けなかったから。「1日でも長く出たい気持ちはある。いい時も悪い時もある中で、支えてくれた方々がいるので感謝したい」。丁重に言葉を並べた後、表情を引き締め直した。一夜明ければまた、次の試合が来る。記録の余韻に浸っている暇はない、ということだ。【佐井陽介】