日本ハム大田泰示外野手(26)が、あわや幻弾の危機を回避してチームの連敗を止めた。19日、オリックス9回戦(札幌ドーム)の3回に2試合連発、シーズン自己最多となる5号3ランをバックスクリーン右へ運んだ。一塁走者のブランドン・レアード内野手(29)を追い越しそうになるハプニングを、間一髪で踏みとどまって正真正銘の自分超え。最近6試合で4本塁打と本格化してきた長距離砲の活躍で、2カードぶりに初戦を制した。

 大田が冷静に珍プレーを回避した。3回無死一、二塁。中堅右方向へ高い放物線の打球を放った。「振りきれたのが一番」と、スタンドまで届いた。一塁ベースを回ると、タッチアップに備えていたレアードが一塁へ戻りかけていた。「追い越してしまうとアウトになってしまうので、そこだけ確認しました」と、立ち止まって両腕を大きく広げた。セーフのジェスチャーで審判に追い越していないことを確認し、ゆっくりとダイヤモンドを1周した。

 打球とともに、レアードの動きもしっかり注視していた。「ああいうことは、けっこうあるので」と、打った瞬間から意識に入っていた。04年には札幌ドームで、かつて在籍した新庄氏が左中間へサヨナラ本塁打を放ちながら、一塁走者の田中幸(現2軍監督)に抱きつかれて1回転。追い越したとして記録は単打になったこともあるが、今回は「幻のアーチ」にはさせず、シーズン自己最多の5号3ランとした。

 新たな定位置に入り、ポテンシャルが引き出されている。10日西武戦からスタメン出場時の守備位置は中堅から左翼となった。その試合は無安打に終わったが、12日ロッテ戦から6試合連続安打を放ち、4本塁打をマーク。中堅での12試合で2割1分4厘だった打率は、左翼7試合で3割8厘に向上した。

 左翼を守っていた西川との入れ替えを進言したのは川名外野守備走塁コーチだ。「いろいろと考えすぎるところもあるし、打席に集中してもらいたい」と意図を明かした。中堅手は外野陣の司令塔として、指示も出す。移籍1年目で不慣れな部分もある。また、同コーチは西川の中堅守備に適性も見いだしていた。大田の守備での負担も軽減することにつながるコンバートが功を奏している。

 プロ9年目で、本塁打数は未知の領域に達した。栗山監督も「アレが入るのは本当に魅力的。でも、ここからだよね。ここからがスタート」と、期待値は高い。大田も「シーズンは、まだまだ続くので」と、声をそろえた。未完の大器と言われたスラッガーが周囲の後押しに応えるように、確実に殻を破ろうとしている。【木下大輔】

 ◆04年9月20日 日本ハム対ダイエー25回戦(札幌ドーム) 日本ハム新庄剛志外野手(SHINJO)が、3点差を追いついた9回裏2死満塁で左中間スタンドに運んだ。サヨナラ満塁本塁打のはずが、一、二塁間で一塁走者の田中幸雄と抱き合い、走者追い越しでアウトと宣告された。記録は単打で打点は1に。試合後、田中幸から謝罪され「いいんです。何言っているんですか。勝ったんだから」と勝利を喜んだ。