久々に、リミッターを解除した。2回裏2死一、三塁。西武浅村栄斗内野手(26)は、ソフトバンク先発中田の141キロ直球を、フルスイングでとらえた。カウントは3ボール、ノーストライク。しかし、ためらいはなかった。

 「真っすぐだけじゃなく、変化球でも真ん中付近に来たら振ろうと決めていました。決してバッティングカウントじゃなかったですけど、とにかく投球次第でした」

 打った瞬間、それと分かる本塁打。豪快なフォローの勢いで、一塁に向かって軽くバックステップしながら、バットを高く掲げて打球の行方を確認した。

 会心の一発は、左翼席上段に弾んだ。浅村は「まあ、キセキですよ」と笑った。単なる謙遜ではない。「今年は本塁打は打てない年だと思っていたので」。そう続けた。

 「今シーズンはとにかくたくさんヒットを打つ。そしてチャンスで走者をかえす。そう意識してやってきました」

 浅村を主将に任じた辻監督が、付け加えるように説明する。

 「今季はずっとチームバッティングに徹してくれていた。久々に彼らしいバッティングだった」